ロボット社会

電遊

「ロボット社会」

 おれはコンビニの店長をやっている。俺と二人のバイト計三人で営業しているが

今最大の悩みはバイト二人が使い物にならず困っている。

 おかげさまで業績は右肩下がり、オーナーから早く何とかしろと圧力をかけられる始末だ・・・速くクビにしてやりたいところだが人手不足のこのご時世、全然応募はやってこないどうすれば・・・

 店長は頭を掻きむしりながら考えていると、入店音が鳴った

反射的に「いらっしゃいませ」と言いレジに立つと店長は目を丸くした


スーツを着たロボットがレジを挟んで立っていたのだ・・・


 店長は唖然としつつ恐る恐る口を開く・・・

「えーとお客様・・・ご用件は何ですか?・・・」

ひとまず普通の客として対応し相手の出方をうかがうことにした、するとロボットはこう返した。


「コンニチハ ワタシハ 株式会社オートワーカー社ノ 営業ヲシテオリマス

 AW-171ト モウシマス 本日ハ人材二 オコマリトノコトデ 労働ロボットノ

 紹介二 マイリマシタ」

 そういうとロボットは店長の前に自身の名刺を差し出した。

店長は名刺を受け取ると。

「労働ロボット・・・そんなものが使い物になるのか?」

「ハイ、事実 我ガ社デハ実用化二成功シ 役員以外ハ全てロボット二置キ換エル

 事二成功シテイマス」

なるほどと店長はうなずいた、現代の技術は飛び込み営業をロボットに任せられるほど進化しているのか、興味がわいたので事務所に連れていき、もっと話を聞いてみることにした。


「それでその労働ロボットを雇うのに、いくらかかるんだい?」

「労働ロボット、AWシリーズノリース料金ハ一台二ツキ、月額20万円カラトナッテオリマス」


なるほど・・・悪くない金額だ。


「更二初回ノ 三カ月分ハ無料デ 無料期間中二解約シテイタダケレバ 一切費用ハカカリマセン」


だったら良い話だ、使い物にならなければ、無料期間中に解約すればいいし・・・

「よしっ決めた、契約する」


・・・契約から一月後、労働ロボットAW-756がやってきた。

そしてAW-756の働きは素晴らしい物であった。ロボットなので疲労を知らず

24時間休憩なしで働ける。さらに内臓の高性能コンピューターで接客、品出し、発注、会計を全て精確かつ素早くこなしてくれた。さらに近所でロボットが働いているコンビニとして話題になり、客足が増えた。


「イラッシャイマセ レジ袋ハ ゴ利用デスカ?」

「わぁママーみてみて、ロボットが働いているよ」

「あらあら、最近のコンビニは凄いわね」

「よしよし、特にお子さんにはウケがいいぞ、ここからさらに攻め込むか」


俺は使えないバイト二人を解雇し、新たに労働ロボットAW-556を雇った。

さらにSNSアカウントを立ち上げ、ロボットが働いている未来のコンビニとして

宣伝した。


「使えないバイトの代わりにロボットを導入してよかった。おかげで業績はV字回復まさに労働ロボット様様だなッ!!」


その瞬間入店音と共に見覚えのある人物が・・・


「久しぶり、元気にしてるかね?」

「オ・・・オーナーさんッお久しぶりですッ」

「いやー最近は中々盛況の様だね?一時はどうなるかと思ったよ」

「いやー長いこと迷惑をかけてすみません」

「私としてもね、今回君が導入した労働ロボットに対しては強い信頼を寄せている

 そこでだ、君に伝えなければならないことがある」

この瞬間俺は、今までの努力が報われ、ついに昇進の時がやってきたのだと胸を躍らせた。


「店舗の完全無人化のために、新たに店長ロボットを導入しようと思う」

「・・・えっ」

「店長・・・ロボット・・・俺はどうなるのですか?」

「長いことご苦労様、明日から来なくていいよ」


こうして俺は失職した・・・


失意のなか、かじかむ手を両手でこすりながら真冬の繁華街を歩く・・・


「落ち込んでばかりもいられない、早く次の仕事を探さないと」

 俺はハロワに駆け込んだ。

職員として出てきたのは、ロボットだった・・・


「え~ともしかしてあなたも例の労働ロボットですか?」

「ハイ、私ノ名ハAW-640トモウシマス 本日ハドノヨウナ ゴ用件デ

 来タノデショウカ?」


「実は失業しちゃって、職を紹介してほしいのですが・・・」

「申シ訳ゴザイマセン、現在募集シテイル求人ハゴザイマセン」

「いや・・・この際仕事は選ばないからさ、何か一つぐらいあるだろ?」

「イイエ、コノ手ノ選バナクテ良イ仕事ハ 全テ我々ロボットノ独占状態二ナッテマス、ソノタメ ココノ ハローワークモ 近々閉鎖予定デス」


「・・・・・」


その後もあきらめずに、ハローワークを転々としたがついに仕事は見つからなかった・・・


それから十数年後・・・


 俺は元店長・・・今は家で生活保護を貰いながらニートをしている。

朝起きてコンビニ弁当を食べて、日が暮れるまでスマホをいじり、そのまま寝る生活を繰り返している。

 あれからロボットの進化は目覚ましく、研究ロボット、社長ロボット、果ては政治家ロボットが出てきて、今では事故も不正も無く、完璧に仕事をするロボット社会になった。

 代わりに人間の居場所がなくなってしまった。そのためこの国の人間は俺を含めて一億総ニート状態になっている。

 ロボットが労働し、稼いだ金が人間たちの生活保護に使われる。そんな状態だ。

こうして人類は、働かなくても食べていける理想郷を手に入れた。


             何も問題はないではないか?


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ロボット社会 電遊 @denyu

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