最悪な状況。でも、僕にとってはおそらく、平穏な日常 KAC20241-4全部乗せ。
久遠 れんり
はじめから、ぼくの人生は詰んでいた
ぼくは、高校を卒業をすると、そのまま働きに出た。
地元の工場。
家が、自営業で通信設備の下請けとかで、仕事に
丁度その頃、色々あったのだろうが、給料はほとんど取られた。
でもまあ、家にいたし、ボーナス分などで取られなかったお金を、やりくりしていた。
だが二年もすると、借りてこいと言う。
「だけど、お金は皆持って行っているじゃない。借りて来いって、どうやって払うんだよ」
「やかましい。親に育てて貰った恩を考えろ。支払い分は見てやる」
そんなことを言って、返せるわけは無い。
五万貸せ、十万貸せ。
すぐにカードは限度額。
当然自転車操業的に、先送りしていた支払いは滞る。
「借りてこい。別で借りて払えば良い」
そう言って、契約するのについてくる始末。
そして。
「いやあお客様では無理ですね。総量規制というのがありまして。他社さんで限度が一杯でしょう。それに支払いの遅れもありますし」
それを聞いて、ぼくは安堵した。
もう借金を増やさなくていい。
だが、訳のわからない電話が、掛かって来始める。
「借りた金を返せや」
その電話は、会社にまで。
会社の人からの紹介で、法律事務所へ向かう。
そう、親が人の名前を勝手に使い、ヤミ金に手を出した。
「詳細はわかりました。ですが、実際契約はあなたになっています。支払わねばいけません」
「すみません。給料の振込口座を親に握られていて」
「こちらから言って返してもらいます。それと面談禁止や接近禁止などの『仮処分命令』を請求してみましょう。家は出て、連絡先は秘匿しましょう」
親身になって貰い、本当に助かった。
お金は支払いながら、放送大学で勉強して大卒資格を取った。
まだ工場に勤めて居るが、また周りで親がうろうろし始めたので相談しつつ、就職先を探す。
だけど、面接で落ちる。
理由ははっきりしないが、セキュリティ・クリアランス(SC)制度が悪用され就職時の採用に使われている。そんな話が聞こえてきた。
元々は、国際共同研究開発等に参加する際に、相手側から求められることがあるため、経団連から経済安全保障分野のSC制度の創設を求めていたらしい。
政府が信頼性を審査し確認した者に、秘密情報へのアクセスを認めるものである。
その中には懲罰や、経済状態。これは家族も含めてみられ、困窮者や債務整理を行った者は、お金が関わる職には就けないらしい。
会社と言う物は経済活動に関与する。
つまりぼくは、まともなところに就職が出来ない。
そう。ぼくみたいな人間は貧乏から抜けられない。
話を聞きながら、目の前が暗くなる。
やけになり、酒を飲む。
心がささくれる。
だけど、お世話になっている工場は、まだ働かせてくれる。
そうして、陰鬱な気持ちで生活を続け、もうすぐ三十歳。
この年になって、先というモノを考え始めた。
子供も居らず、将来どこかのアパートで一人。腐って発見される?
「最後まで、人に迷惑を掛ける生活か?」
だけど最近は、七十歳を越えると賃貸は貸してもらえないと聞いた。
借金をやっと払い終わって、部屋を変わろうかと、この前住宅の内見に行ったときに伺った。
意を決して、最近コンビニのカウンターに入っている女の子へ、声をかけることにする。
彼女は、こんなぼくに対しても。優しく接してくれる。
受け入れてくれるかもしれない。
仕事中には迷惑だろうから、終わるまで待つ。
奮発して、ペンダントを買い。
その箱を握りしめ待つ。
ぼくには三分以内にやらなければならないことがあった
彼女がカウンターから消え、通用口から出てくる三分。
見上げると、今日の空は、まるで全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れの様に、暗雲がすごいスピードで流れている。
その三分の間に、言葉をまとめる。
来た。
「やっほー。おまた」
「おう。お疲れ」
誰だ。あのイケメン?
彼は、さりげなく彼女のお尻をなでる。
「んもう。あ、と、で」
ぼくの心は……
その時、折れた。
こんな、不幸なぼくには、きっとハートや、星がきらめくことはないのだろう……
最悪な状況。でも、僕にとってはおそらく、平穏な日常 KAC20241-4全部乗せ。 久遠 れんり @recmiya
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