どうやら世界は終わるようです

ろくろわ

神妙な面持ちで

 突拍子もない話だが、どうやら世界が終わるようだ。

 

 待ち合わせ場所の喫茶店で珈琲を飲みながら、あきらは神妙な面持ちでたかしに事の顛末を語りだした。


「駅前のさ、守護霊が分かるって占い師の所があるだろ?」

「えっ?あの歯の抜けた婆さんがしているあんな胡散臭い所に行ったのか?」

「あぁ、安かったし守護霊ってのが気になってな」

「それでどうしたんだよ?」


 孝はぬるくなった珈琲を口に含み、晃の言葉を待った。


「占いの婆さんの前に座ってさ。そしたら婆さん、俺の手を見るなり○○くれてるねって」

「えっ、何だって?」

「俺も聞こえなかったんだよ。それでもう一回聞いてみたんだ。そしたらとかとかそんな風に聞こえるだけで、やっぱりはっきり聞こえなかったんだ」

「何だったんだろう?」

「それで推理してみたわけさ。この占いでは守護霊が見える。とかに聞こえる言葉。そして閃いたのさ。釈迦しゃかじゃねぇかと」

「はっ?何が」

「俺の守護霊。しかもただの釈迦じゃない。グレてる釈迦だ。占いの婆さんはって言っていたんだよ」


 突拍子の無い晃の話に孝は置き去りになっていた。


「それで続きは?」

「しかも婆さん、『これはヒドイね』何て言うから、どうしたら言いか聞いたんだよ。そしたらば良くなるって」

「えっ?何だって」

「また聞こえなくてね。ばとかばとか。そして閃いたのさ。ほっとけは良くなるって言ってるって」

「はぁ?」

「つまり釈迦しゃかグレてもほっとけで良いってことらしい」

「何だかなぁ」

「でもさ、俺感動しちゃって。だってまだ相談内容なんて一つも言ってないのに、守護霊の事も対処法も先読みして話してくれてるんだよ。きっと婆さんはこうやって悩める人の悩みを解決して、世界を救ってたんだろうなって」


 一人、うんうんと頷いている晃を横目に、孝には話の中身が見えなくなっていた。


「それで俺、婆さんに聞いてみようと思ったんだよ。俺も婆さんみたいに世界を救えるかって。そしたらそれを言う前に婆さんは、もう一度俺の手を見て『むいてないだろうね』って怒りながら言ったんだ。どうやら俺には世界を救えないらしい」


 孝は占いの婆さんが見た晃の手が気になった。

 どんな手をしていたらグレた釈迦が見えるんだよ。孝は晃の手を掴み眺めた。


「うわ、晃。お前の指、てるじゃねぇか」

「えっ、孝にも見えるのか?」

「当たり前だろ」

「なぁ、本当にこのままで大丈夫か?」

「まぁてるだけだし、ば大丈夫だろ」

「孝も占いの婆さんと同じことを言うんだな」


 それにしても晃のささくれは酷いものだった。何度もかれたのだろう、傷になり膿んでいた。


「晃、お前剥いて無いだろうな?」

「やっぱり向いてないんだなぁ」


 晃のささくれを見て痛そうな顔をする孝と、そんな孝の険しい表情をみて、やっぱり釈迦ささグレているんだと勘違いしている晃には、世界を救えそうもなかった。



 了

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どうやら世界は終わるようです ろくろわ @sakiyomiroku

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