【KAC20244】ささくれ

ぬまちゃん

ささくれは恐ろしい

 ドス! グハッ……

 バキ! ウゴッ……

 ボクッ! フゴゥウウ……


「ハァハァハァ。しぶといやつめ」


 コンクリートに囲まれた部屋の中、椅子に縛り付けられ一方的に殴られる男がひとり。


「こうみえてもオレはプロだ。秘密警察の拷問程度に屈するオレじゃない。それに自白剤にも耐性があるしな」


「くそ。これだけ痛めつけても口を割らないし自白剤も効かないとなると、最後のアレを使うしかないか」

「え? リーダ、アレを使うんですか。あまりにも危険で禁止されているアレを」


 殴り疲れて膝に手を当て、ハアハアと口で息をしていたリーダとおぼしき軍服の男は、うしろに控えていた部下に聞こえるようにつぶやく。その内容を聞いた部下は、恐ろしさのあまり顔を真っ青にしてあとずさる。


「仕方ないだろう。こいつの口を割らせなければ、こんどは我々が粛清されてしまうのだからな」


 * * *


 部下は分厚い手袋をして一枚の板を持ってくると、縛られている男の指先に押し付ける。


「ふふふふふ。お前には、この板を指でなぞってもらおう」


 この板は表面がささくれ立っていた。このまま指でなぞれば棘となって指に刺さる。


「や、やめろ。そんな拷問、国際法違反だぞ」

「うるさい、おまえが口を割らないからだ。まさに自業自得というものだ」


 今まで落ち着いていた男の顔はみるみる青ざめていく。部下は、その男の指をつかむと、ささくれがひどい板をなぞらせる。


 うがぁ、ああああああああ!

 部屋中に男の叫びが響き渡る。


「はあ、はあ。くそおおお。このぐらいの痛みに耐えられないでどうする」


 男は、歯を食いしばってズキズキと指から伝わってくる絶え間ない痛みに耐える。


 もう一息だな。

 リーダがそう思って男の指を見つめと、ささくれが。


「おまえ、指にささくれがあるじゃないか。なんて親不孝なヤツなんだ。おまえの親は今の姿を知ったら悲しむんじゃないか」

「うるさい、オレの父親と母親を巻き込むんじゃない」


 男の心はささくれ立ち、平常心を失っていく。


「ふっふっふ。ささくれは痛いからな。おい刺抜きを持ってこい」

 リーダは男の指を握ると、刺抜きでささくれを無理に引きはがそうとする。


「やめてくれ! すべて話す」


(了)

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