第25話 AM8:15
戦争……それは始めたら負けるまで終わらないギャンブルのようなものだと私は思う。
日本は日清・日露・第一次世界大戦とうまく行き過ぎてしまったのだ。これはどこの国にも当てはまる。勝ちすぎると国民が自分たちの力に過信し過ぎてしまっているのだ。そしてそれは戦争のしやすくなる国、しいては戦争のための国へと変化してしまうのだ。
戦後の日本は史実よりも暗く辛いものになっている。
戦後である1946年に開かれた極東国際軍事裁判では、戦争犯罪人。いわゆる戦犯を指定し、裁かなければならない。しかし一・一二事件で大半の軍部主導者が殺害された。
その責任はどこに行くか。守るもののいなくなった国家最上位責任者である。しかし、その国家最上位責任者ですらいないのである。
天皇はもう一度力を持つことを恐れたーーーーーーーによってすでにーーされていたからだ。
そして国を守らなければ朽ち果てる。
日本は北海道以北をソ連、満州地域を中国、
東北、及び関東をアメリカ、中部及び近畿をイギリスが支配した。大阪以西は変わらないものの、統治するものがおらず無法地帯となっている。アメリカは自らの落とした原爆の地域を統率者のいない日本に放り投げたのだ。
この世界には高度経済成長期や、朝鮮特需景気、東京オリンピック景気も、神武景気もない。
何一つ救いもなく、原爆を三つ落とされその後遺症も大きい中、この国はどこに向かっていくのだろうか。
2025年、日本。
最後の植民地と呼ばれた国も、終わりが訪れた。冷戦の最前線となった国は朝鮮だけではない。
史実では電子機械が発達したこの時代も泥沼の戦争は各地で続いている。それはもちろん日本も該当した。
元皇居には桜の花びらが舞い散っていた。
桜の数も減った。人の数も、生き物の数も、自然の数も。何もかもが消えていった。
80年。それだけの月日が経てば文化も変わってしまう。
火の粉の舞い散るかつての東京で私はそんな想いにふける。
どこからかB29の空低音が聞こえた。
ヒューーーーー
ピカッ
時計は8時15分をさしていた。
日本の桜、太平洋に咲け
終
制作・著作
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北条 綱成
日本の桜 太平洋に咲け 北条綱成 @wnh
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