第10話 ミサイル

「さて、ねえ、エメット、ミア」

「なんでしょう、フィーナ様」

「なに、フィーナ」

「実はさ、空を飛んでるヒュージイーグル、倒してみたいと思わない?」

「え、それは……」

「ん、もちろん」


 ということで、私は頭を悩ませていた。


「そうだ。ミサイルだよ、ミサイル」


 一人作業部屋でうんうんと頷く。


「魔石、それもスライムの魔石の残り、これを詰めて花火みたいにすれば」


 厚紙で胴体を作り、そこにスライムの魔石を詰めていく。

 ただの魔石ではなく火の刻印を刻んであるので、激しく燃えて炎を吹き出すのだ。

 この力を使ってそれを飛ばす。

 先端には爆発の魔石を仕込んでおいて、強い魔物の反応に応じて大爆発するという仕掛けにしておく。

 普通なら魔石が詰まっていてかなりのお値段になるが、しょせんスライムの魔石なのでその値段だけなら大したことはない。

 小さな魔石に魔法陣を刻んで魔道具とするのはこの前、防御のアクセサリーで披露した技術の応用だ。


 全長三十センチ。なかなか大きい。


 試験射撃当日。エメットとミアに見せる。


「変わった筒ね」

「魔石の塊」

「うん、先に爆発したら大変だ。うひひ」


 にやりと笑って見せる。

 ふたりも笑顔で応じてくれた。

 彼女たちも、なかなか根性が座っている。


 いつものようにさっそうと門の外までくると、安全距離を取る。


「これくらい離れていればいいでしょ」

「危ないのですか?」

「まあ、念のため」


 マジックバッグからミサイルを取り出す。


「じゃあみんなはちょっと離れててね」

「はい」

「ん」


 二人が見守る中、私はミサイルを地面に立てて、二メートル離れて魔石を混ぜて作った導火線に火をつける。

 種火は着火の魔法だ。


「はい、着火」


 ジジジジジと導火線が燃えてミサイルのお尻に入ると「ボアアアアアアア」と火を噴きながら飛んでいく。


「うおおおお」

「すごいですわ」

「ほほう」


 ミサイルは上空を旋回しているヒュージイーグルを狙って飛んでいく。

 ヒュージイーグルもすでに音でびっくりして、逃げていこうと進路を変更しているが、ミサイルのほうが速い。


 そのままミサイルがヒュージイーグルの一匹に接近していき、大爆発を起こした。



 ドガアアアアン。


「うぉっと」


 直撃したヒュージイーグルはミサイルの破片と共に落ちてくる。


「こっち、落ちてきますわ」

「拾って、拾って」

「了解」


 三人で落下地点へ急いで向かう。


「ヒュージイーグル、死んでますわね」

「だね」

「ん」


 すでに死亡しているヒュージイーグルを持ち上げる。

 結構重い。

 再び降ろして、魔石を取り出す。


 魔石は真っ先に取り出す。でないとゾンビになったりすることがある。


「んん、よいしょ。黄色い大きな魔石」

「ですわね。相変わらず綺麗ですわ」

「すき」


 取り出して見せる。

 あの、ヒュージイーグルを仕留めたのだ。

 大きな魔石が手に入った。


「やったですわ」

「だね」


 ヒュージイーグルたちは一時的にどこかへ逃げていった。

 空には一匹も見えない。


「お肉は冒険者ギルドへ」

「そうですわね」


 マジックバッグにしまう。


「いしし、実はですね。もう二発、ありまして」

「あらまぁ」

「ん、やる」


 こうして、今度は二発同時発射を狙う。

 二つ並べて地面に立てる。

 それぞれ、二メートル離れてエメット、ミアが点火要員だ。


 すでに空は沈静化して、再び残りのヒュージイーグルが何羽も空を飛んでいた。


「三、二、一、点火」


 ほぼ同時に火を噴き上げながらミサイルが飛んでいく。

 別々の目標に向かって迫っていき、それぞれ爆発を起こす。


 ドガアアアン、ドガアアアン。


 少しタイミングがずれて爆発したので、二度音が鳴った。


 ひらひらとヒュージイーグルが二羽落ちてくる。


「左は、エメット頼んだわ」

「はい」

「右は私とミア」

「ん」


 こうしてさらに追加で二羽のヒュージイーグルをゲットした。

 もちろん、黄色い魔石も二つ手に入り、合計で三つになった。


「はい、一つずつね」

「ありがとうございます」

「ありがと」


 エメットとミアにも一つずつだ。

 かわいらしい笑顔で、受け取ってくれた。

 売却すればそこそこの値段ではあるが、きっと記念に取っておくんだろうな。

 分からないけど。


 みんなで黄色い魔石を観察する。

 中は様々な色がちりばめられている。

 さながら小宇宙のようで非常に神秘的だ。


「とても綺麗ですわ」

「綺麗」

「だよねぇ」


 角度を変えると、反射が変わってキラキラと煌めくので、なお面白い。

 この大きさなら魔石宝石の一種ともいえるだろう。


 帰りがけ、門番さんに注意された。


「なんだか、とても大きな音がして、こちらではびっくりして調査中なのだが」

「あ、はい。私たちです。ちょっと魔石の実験をしてて」

「そうなのか。まあいい、問題ないようだったので、大丈夫だろう」

「すみません」


 ちょっとくぎを刺された。

 まあびっくりはするよね。

 私もびっくりするくらい大きな音が出たし。

 静音魔法とか付与しておくべきなのだろうか。

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私はタダの冒険者になりますわ ~公爵令嬢、聖女、姫騎士なんて知りませんことよ~ 滝川 海老郎 @syuribox

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