第七話

 わたしはマンションに連れて行った。2人きりになりたいってあなたが言ったんだからね。


 わたしは玄関でキスをした。

 って意外とミナくん、拒否しない。前は拒否ったくせに。


 って男のわたしでもよかったの?

 まぁ良いとして抱きついてきて。


 そのままリビングのソファーで何度もキスをした。


「ミナくん大丈夫なの?」

 とりあえず聞いてみた。

「……わかんないけどさ。初めて会ったときにね、かっこいいって思ってさ」

「それは聞いた……。でもこれ以上のことはできるの?」

 ミナくんの顔は固まった。そして間を開けて首を横に張った。


 わたしは湊音のそのささくれのある指を舐めた。ようやくこの指を舐められるのね。

 彼女のために整えられた爪。もう何度も挿れたのだろうか。悔しくて舐める。


 ミナくんは嫌がるけど

「あっ」

 と感じる顔。指だけでこんな反応してくれるなんて。

 するとミナくんは顔をすごく赤らめて

「今日はここまでで良いかな……」

 って言うから一度ぎゅっと抱きしめてミナくんの胸元に顔を埋めた。心臓の音を聞く。とても速くなっている。息が上がっている。わたしも。


 体温もお互いに熱くなっている。もっとこの先に進みたいけど彼の理性が止めているようだ。やはりまだノンケの君には無理かしら。しょうがないわ。


 少し互いに落ち着いてミナくんから話し始めた。


「李仁のところ通うようになってからな、勃つようになったんだ。だから嬉しくて彼女としまくったらこのザマだ」

 と笑った。


 わたしとセックスして欲しいがために性欲つけさせようとバランス良い料理振る舞ったのに。

 わたしはもう一度ミナくんの手を握った。そして彼の指を見る。

「痛っ」

 嫉妬のあまり歯で湊音のささくれを切った。


 わたしは少し血が出た彼の指を舐めて悶える彼を見てこの人とならずっと一緒にいたいってね。


 法にさえ邪魔されなければ。


「そいや李仁からのハンドクリーム……もらったのに使えてなくて。あまり塗ることもなくて。カバンにはあるんだけど」

「もう、それ塗らないからささくれできてカサカサのままなのよ、貸しなさいよ」


 わたしはミナくんの上に乗る形でハンドクリームを手にたっぷり乗せて彼の右手につけた。


「そんなにつけるの?!」

 ミナくんを見つめながら手を何度も握ったり指をなぞったり。ぐちゃぐちゃっと音をわざと鳴らして。

 また悶える彼はわたしにキスをした。わたしも舌を絡めてもっともっと……。


「もうダメ……李仁っ」


 あ、そうだ。左手もまだ……。

 残ってる、薬指の付け根にもささくれが。

 まだ時間かかるけどこれからたくさん美味しいものたくさん食べさせたらささくれもできにくくなるかもだけどミナくんのささくれを噛みちぎれるのはわたしだけ……。

 左薬指を口に入れて舐めてささくれを噛みちぎった。


「痛っ! あっ……」

「ふふっ」


 それだけで気持ち良くなるなんて。

 でもこれ以上の仲になるのはまだ先な話だけどささくれの皮を下で舐め回しながら悦を感じるのであった。



 終

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【KAC20244】(BL)貴方のささくれを噛みちぎるまで 麻木香豆 @hacchi3dayo

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