こんなアンケートは嫌だ
薮坂
コント「街頭アンケート?」
「はぁー、春だな。風が気持ちいいよ風が。天気もいいし今日は絶好の散歩日和だよ。仕事休みでよかったぁ、思わずスキップしちゃいそうになるなぁ!」
「あのーすみません、おニーさん。ちょっとお時間よろしいですか?」
「……いやちょっと待って? 何か今、発音おかしくなかった? ていうかお姉さん、何かを略してない?」
「略さない方がいいですか? おニートさん」
「それだなそれ! ニートじゃないよ、ただ散歩してただけだから!」
「あ、そうなんですか。丁寧に言ってみたつもりなんですけど」
「丁寧でもトゲを感じるなぁ! あのさ、散歩の邪魔しないでくれる?」
「散歩中だったんですよね? ちょうどよかった! 今、お時間に余裕あるニトに声掛けしてまして」
「ヒトな、ヒト! またニートが短くなってるから!」
「えっ、ニートは短命……? それはさすがに失礼では?」
「言ってないし失礼なのはあんたの方だと思うけどなぁ! で、何よお姉さん。俺に何か用?」
「あ、そうなんです。今、答えてくれると豪華景品がもらえるオタクなアンケートをやってまして!」
「多分『お得』かな。すげぇマニアックなアンケートになるよそれ。で、何かの宣伝? 景品って何がもらえるの?」
「それは答えてからのお楽しみです! で、やりますか? それとも人間やめますか?」
「凄い2択だされてるよ! アンケートやらないって選択はないのかよやべぇヤツに声かけられたなぁ! わかったやるよ、やるやる! まだ人間やめたくないしな!」
「わぁ嬉しい! それでは参りましょう第1問! ズンチャ!」
「いやちょっと待って? それアンケートってよりクイズじゃん! 後のその『ズンチャ!』って懐かしの効果音さぁ、アメリカ横断するクイズ思い出すんだけど!」
「……お兄さん、さては経験者ですね?」
「してないしてない、さすがに世代が違うよ!」
「経験者の方にはこれをお渡ししています! どうぞ!」
「これ早押しボタンじゃん! ポーンて鳴るヤツじゃん! やっぱりクイズじゃん!」
「それでは気を取り直して第1問! ズンチャ! 火、砂、泡、霧……この後ろに続く漢字一文字と言えば何?」
「ポーン! 答えは箱!」
「ピンポンピンポーン!」
「やったぜ! 結構本格的な問題だな!」
「お見事! お兄さん、警戒です!」
「え、警戒? 正解じゃなくて?」
「はい、正解ではありません! 今のでお兄さんが完全にクイズプレイヤーだってわかりましたから要警戒、要警戒! ここから私も本気で行きますね!」
「いやこれアンケートだよね?」
「では第2問! ズンチャ!」
「ズンチャはいるんだ……」
「ギリシア神話によると神々に造られし最初の女性とされ、決して開けてはならないある物を持って地上に送り込まれた……」
「ポーン! パンドーラーの箱!」
「ピンポンピンポーン! お兄さん、後悔です!」
「後悔⁉︎ 正解じゃないってこと⁉︎」
「正解にはなりませんでしたがやりますね、お兄さん! 久々の強敵だなぁ! 押しポイントも完璧っていうかちょっと早めだったし、これ勝負かけましたね?」
「いやだからアンケートだよな? 勝負かける相手がいねーよ!」
「それでも確定ポイントの僅か手前で押してくるあたり、只者じゃあない! さすがです! ちなみに問題全文予想できます?」
「うーん、『ギリシア神話によると神々に造られし最初の女性とされ、決して開けてはならないある物を持って地上に送り込まれた女性が持っていた物は、彼女の名をとって何と言う?』くらい?」
「お兄さん、厄介です!」
「厄介! ストレートな悪口!」
「いやぁ、それにしてもやりますねお兄さん。私、ギトギトします!」
「ドキドキだろどう考えても!」
「では第3問! ズンチャ!」
「いや正解にしてもらえないの⁉︎ もうツッコミも思い浮かばねぇよ! クソ、よしこい!」
「江戸時代、伊勢神宮の
「ポーン! 一万度の
「……で・す・が! 一兆度の火球でウルトラマンを倒した宇宙恐竜は何でしょう? 答はゼットン! お兄さん、半壊!」
「全壊じゃなくてよかったぁ! って難し過ぎだろコレ!」
「私、オタクなクイズって最初に言いましたよ?」
「言ってたのはアンケートな、アンケート! クッソ、一万度と一兆度繋がりか……いややっぱ繋がってねーよ全然!」
「さぁ盛り上がって来たところで第4問! ズンチャ! 映像クイズです! 次に流れる映像を見て問題に答えてください。では映像スタート!」
「よし映像クイズか。よーく見ないとな。きっと違和感系だぜこれは!」
「……………………」
「いや流せよ映像を‼︎」
「……もう流れてます」
「え? ひっそり流してるパターン⁉︎ どこだどこだ、近くのデジタルサイネージとかか⁉︎」
「ブッブー。時間切れ! お兄さん、他界です!」
「ペナルティが重すぎる! どこに映像流れてたんだよ、探したけど見つからなかったぞ!」
「正解は『重箱の隅をつつく』でしたー。映像どおりですよね。私の脳内に流れてたんですけどねぇ?」
「脳内⁉︎ 見れるワケがないッ! 正解させる気ないだろ!」
「ではいよいよラストミステリー!」
「ふしぎ発見! って番組変わってるよ! そしてやっぱクイズじゃん!」
「運命の第5問! ズンチャ! 箱の中身はなんでしょうクイズ! 今からある物が入った箱を出しますので、箱の中身を当てて下さい! 正解者には85ポイントプレゼントです!」
「箱の中身クイズか……、ちょっと怖いんだよな、生き物系とかだとさぁ」
「安心してください! 触る系の箱クイズではありません!」
「え、じゃあ何する系なのよ?」
「ただ感じる系ですね!」
「無理じゃねーか! 透視なんてできるワケねーよ!」
「いいえ、きっとお兄さんなら正解に辿り着けるハズですよ! すでにヒントは出ています、さぁ頑張って!」
「箱の中身を触らずに当てるなんてどう考えても無理ゲーだろ! いや待てよ? 今までの問題は全部で4問、その全てにある意味『箱』が関係していた……そしてこの問題を取れば
「と、いうことは?」
「わかった正解は箱だ箱! 箱の中に箱が入ってんだ!」
「ファイルアンサー?」
「もうクイズだって隠してねぇよな! あぁ、ファイルアンサー!」
「──お兄さん、
「卍解⁉︎ マンガのブリーチ的なヤツ⁉︎ いやいや正解かどうかわかんねーよ!」
「……というワケでね、今日は街角アンケートをやってきましたけども。どうでしたかお兄さん、手応えの方は?」
「なんか急に締めに入り出したけど何これマジで? そもそもアンケートに手応えなんかあるワケねーよ、クイズだろ! で、最後のは正解なの不正解なの?」
「だから
「それがわかんないんだって! それに卍解わからない人もいるんだって!」
「……本当にわからないんですか?」
「いやわかるワケねーから! 何が入ってたんだよ気になるだろ?」
「──お兄さん自身ですよ、入っていたのは」
「は? 怖い怖い急に何言っちゃってんの?」
「5問も出して1つも正解出来なかったお兄さん。こう言う人に行う仕打ちは?」
「……まさか、お払い箱?」
「正解! ピンポンピンポーン!」
「クソしょーもねぇよ! なんだよそれ⁉︎ で、結局なにをくれるんだよこのアンケートは!」
「お払い箱っていったら、貰えるのは『ひま』でしょう?」
「もともと休みでヒマなんだよ!」
【終】
こんなアンケートは嫌だ 薮坂 @yabusaka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
今夜も眠らない。/薮坂
★58 エッセイ・ノンフィクション 連載中 36話
俺とポン太/薮坂
★114 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます