激務明けの深夜2時、警察官の“俺”は空腹を抱えてコンビニへと向かう。と、たまに見かける人――真冬だというのにアイスを買っていく女性がいて。彼はつい彼女と同じアイスを買ってしまう。特にしたいこともなりたいものもない、これからもただ続いていくだけの毎日がほんの少し変わるかもしれない。そんな期待を抱きながら。
おふたりの書き手さんによって綴られるひとつのお話、その“俺”こと赤城さんパートがこちら。高卒で警察官になって8年、26歳という年齢よりも仕事歴的に若いと言い切れなくなりつつある年代の無力感、噛み締めさせられますよねぇ。
リアルの重みあればこそ、ささやかなきっかけがこの上なく際立ちます。胸の奥底に積み重ねられてきた靄めきが爆発し、それが小さな一歩という形を得る。ここです! 転機が正しく物語を加速させている構成の妙、わたくしここにこそ注目していただきたいのです!
ふたりの行方はもちろんですが。各話でアイスが務める役どころもお見逃しなくー!
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)