(四)-2(了)

「でもお前、血が……」

「そんなの、ドラマの撮影で使うような血糊を使ったのよ。科捜研のカンちゃん特製よ、良くできていたでしょ」

「じゃあ、俺が撃ったのは……」

「空砲よ、予めあなたの拳銃に入れておいたの」

「だから、あのとき撃っても当たらなかったのか」

 正司はことの顛末を聞いて、一気に力が抜けた腕の痛みも急に激しくなり、その場に膝立ちになってうずくまった。

「でも嬉しかったわ。あなたが私よりも娘をとってくれて」

 妻は娘を連れて正司の所へ駆け寄ってきて言った。そして三人はいつの間にか大勢やってきていた制服の警察官たちの中で、抱き合った。


(了)

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あなたと私と娘 筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36 @HarunaTsukushi

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