星が導く王国で、未熟だった王子が人を知り学び成長していく
- ★★★ Excellent!!!
小さな世界しか知らなかった王子が、後宮を出て広い世界に触れ成長していく物語を丁寧に描ききっています。
魔法や星にまつわる伝承などの世界観と合わせて、まるで大判ハードカバーのジュニア向け海外ファンタジー文学といった雰囲気です。
主人公である第三王子は、王族ならではの尊大な口調ではあるものの、本来は素直で謙虚で努力家であるようです。未熟さを自覚してからは行いを改め、長兄への敬愛のために頑張ったり、ときにはちょっと見栄を張ったりといった振る舞いが等身大で応援したくなります。
周りの大人たちの彼を見る目も暖かく、暗い展開の中ではほっとさせられます。
物語の軸の一つであるヒロインとの愛情が、文通で奥ゆかしくも着実に育まれていくのも見どころです。
主人公が使いこなす風魔法の不思議さ、近しい人々にふりかかる呪いの不気味さなどの超自然的な要素や、王都や旅路の風景、星が輝く夜の海の幻想的で美しい情景など、いずれも飽きさせず立体感のある描写が散りばめられており、読み進むうちにすっかり引き込まれていくことでしょう。