豪華な誕生日プレゼント
西園寺 亜裕太
第1話
「お前さ、今日誕生日だったじゃん?」
友人に問われて、そうだな、と頷く。
「だから、これやるよ」
そう言って、友人が手のひらに乗るくらいのサイズの小さな箱を手渡してくる。
「なんだよ、これ?」
「お前鈍いなぁ。誕生日にやるって言ってんだから、どう考えても誕生日プレゼントだろうがよ」
「へぇ。なんか珍しいな。お前が誕生日プレゼントくれるなんて。何かあったのか?」
尋ねると、友人はふっふっふ、と意味あり気に笑った。
「聞いて驚くなよ?」
「驚かないから、早く言えよ」
俺が急かすと、友人はわざとらしく咳払いをしてから続ける。
「なんとな、競馬で3連単当てたんだよ!」
「マジかよ! お前やるなあ!!」
俺はびっくりして、思わず友人の肩を叩いた。
「だから、俺はお前に誕生日プレゼントを買ってやったと言うわけだよ」
「なるほどなぁ。そうでもしないと、お前は人に物をプレゼントしたり、奢ったりなんてしないもんな」
「お前の中での俺の印象どうなってるんだよ……」
友人は呆れてため息をついてから続ける。
「まあ、なんでもいいや。それ開けてみてビックリすると思うからよ。楽しみにしておけよな。超高級品を買っておいたからな」
「まあ、あまり期待せずに、家で開けるよ」
「凄いらしいから、また開けたら感想教えろよ」
俺は友人からのプレゼントを持って家に帰ったのだった。
そうして、少し期待をしながら家に帰って包装紙を取り、箱を開けたけれど、中に入っていたのは飴が一粒だけだった。
「なんだよ。この飴が高級品ってことなのか?」
不思議に思って飴を舐めてみたけれど、特別な高級感は感じられない普通の飴だった。
「俺にはよくわからないな……」
普通の飴にしか思えないような味の飴を舐めながら、箱と包装紙をゴミ箱に捨てたのだった。
その次の週、大学の講義室で友人に会ったから、感想を伝えた。
「あの飴、特に何の変哲もない普通の飴にしか感じられなかったけれど、本当にそんな高級な飴なのか?」
「何ってんだよ、飴は普通の飴だよ。空箱渡すのも変だから、適当に家にあったやつ入れといたよ」
「いや、お前人の誕生日プレゼントに家にあった飴適当に持って行ったって……」
プレゼントを貰えるだけでありがたいのだから、あんまり文句は言うべきではないだろうけど、それでもさすがに飴一袋くらいは欲しかった。
「あれじゃあ、飴よりも箱と包装紙の方が金かかってそうだな」
呆れて笑うと、友人が真面目な顔で「そうだぞ」と言う。
「え?」
「あの箱、超最先端技術を使った紙製の箱で、水に1時間浸けてもまったくふやけないし、耐熱性も最強だから、焚き火に放り込んでも30分くらい燃えずに済むらしいんだ。だからかなり高かったんだ」
「お前……、マジで先にそれを言えよ!」
豪華な誕生日プレゼント 西園寺 亜裕太 @ayuta-saionji
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