🍛たくさん食べる人はお好き?
七生(なお)。
第1話
社会人一年目だったあの、夏。自分は、あのひと夏の経験を、激闘を忘れません……。
ある日のことでした。
社会人一年目の自分は、先輩とお昼ご飯を食べるため、某チェーン店を訪れていたのです。そこは、全国的に有名なカレーのお店。
先輩と向かい合って席についた自分は、何とその場ではじめて財布を忘れたことに気付いてしまったのでした。
「やばい、どうしよう……」
慌てて店内を見回すと、奥の壁にはでかでかと『大食いチャレンジ募集!』の文字が! 30分以内にお店が用意したカレーを食べきれば、代金が無料ということではないですか‼
さて皆さん。あなたなら、こんなときどうしますか?
先輩に正直に事情を話して、お金を出してもらいますか? それとも、勝負しますか?
私、七生はこう見えて勝負師です。かつては、水上カジノやリスボアでブイブイ云わせていたほどでございます。え? ……コホン! そんなことはともかく、今回のチャレンジは、失敗すればペナルティーがあるようですが、いざとなれば先輩を頼ればいいでしょう。どう見ても、財布が分厚そうな先輩でしたので。
「すいませ~ん」
決死の表情で手をあげた七生。
そして、自分のチャレンジ希望の表明を受けて、ニヤリとする店員さん。
『ふふん。どうせ、あなたになんか、無理に決まってますわ。これはいい見ものですわね。ふふふ……』
店員さんは、そんな、悪役令嬢のような笑顔で、自分のチャレンジを受け付けたのでした。
ちなみにこの店員さん。モデル体型の美人さんでした。
正直、ビジュアルだけで白旗をあげて、『まいった』してしまいそうになったことは内緒です。
しか~し! 自分には熱い想い? があります。
「自分が、財布を忘れてきてしまったことを、先輩にばれたくない! これ以上アホな奴と思われたくない……」
そんな情けなくも決死の覚悟で、申し込んだのですが……。
「これを、ご用意ください」
何と、モデル店員から最初に渡されたのは、エチケット袋。
「こ、これは……?!」
「念のためです。お願いします」
(く……くく、くそう!)
このとき、私の闘志に、静かに火が付いたのでした。いくら何でも、これは、店側からの明らかに格下扱いのサインです。こんな屈辱が、許されるものでしょか。
薄くこめかみに血管を浮き上がらせている自分をよそに、テーブルには、エチケット袋、タイマー、スプーンとフォークなど、これから始まる戦いに向けての小道具が並べられていきます。
えっ、フォーク? 何に使うんだ?
目の前にいらっしゃるのは、この挑戦をかたずをのんで見つめる先輩の姿。
押忍、やるっす!
「お待たせしました~♪」
そして、自分の前に置かれた大盛カレー。何と、米四合らしいです。自分の左手には白米の壁が聳え、右手にはルーの海……。
「では、始めます」
モデルがタイマーを押し、勝負が始まりました。
…………。
最初は、順調に食べすすめていた自分でしたが、異変が起こったのは、20分を経過してから。
「あ、あれ……」
残りのカレーは、あと少し。八割がた食べています。しかし……。
ここに来て、一口が重い。お腹は膨れ、腕が重い。口も開かなくなってきました。
「く、くそう……」
このとき、半泣きの自分の眼に映ったのは、半笑いのモデル。くっ……このままでは、自分は、一生負け犬になる!
今にして思えば、このときの経験が、スタイルのいい女の子がもてはやされる世界を終わらせたお話(え?)『転生社畜の領地経営』に、つながったのでしょうか。
その後、半泣きになりながらも、見事28分余りで四合大盛カレーを見事完食。
お食事代は無料になり、写真撮影をされました。
自分の写真はお店の入り口に飾られ、二度目のチャレンジは禁止するという誓約書にサインさせられたのです。
しかし、当時お店の入り口に掲げられた自分の写真。
これ、まるで指名手配犯みたいなのですが……。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後もたくさんの作品を投稿する予定ですので、作者フォローよろしくお願いします~。完結済の異世界ファンタジー『玄関あけたら2秒でダンジョン‼』も読んでいただければ、ありがたく思います。https://kakuyomu.jp/works/16818023213096877127/episodes/16818023213096931578
🍛たくさん食べる人はお好き? 七生(なお)。 @10seisyatiku
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