何を見て、何を見ないか。目に映るそれは、必ずしも正確ではない。

―見えないものが、視える。
―聞こえないものが、聴こえる。
―ないはずの匂いを、感じる。

現実と異界の狭間に生じる「マヨヒガ屋敷」
ここにはそんな不思議な能力を持った者たちが集まっている。

「正」方向で描かれがちな「特殊能力」
しかし、この物語ではその生まれ持った能力は
「負」として描かれている。
彼らはその能力が災いして幾多の苦難に襲われながらも
なんとか生き延びて屋敷に辿り着く。

癒しと安らぎを与える大地の母のような存在、梓と
彼女を、そして屋敷を支える優秀なクールガイ、古杣。

そんな2人の元で、クレア能力者たちは
訓練を積み、己の能力を負から正の方向に導けるよう
感覚を研ぎ澄ませていく。

見えるものが全てではない。
そこには必ず、あらゆる主観が入りこむ。

―「除」することは、何の解決も生まない。
本当に大切なのは
理解し、許容し、「浄」すること。
そこにあるのは「同情」ではない。
助け合い、互いの力を必要とする「絆」、そして「慈愛」の心。

…それは果たして、正解か。

無意識と意識、そして
現実と空想が交錯する
作者様の沢山の願いと想いが詰まった1作。

この物語の中に 私達は
世界の残酷な現実と、純粋に生きる子どもたちの温かな絆を見る。

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