新人職員の初任務

トモフジテツ🏴‍☠️

蔦縛結束


「実は僕、人間じゃないんだ」


 夜の公園、呼び出された私、彼の笑顔は引きほほには涙がつたっていた。

 周辺道路は黄色いテープで封鎖されている。

 遠くにパトカー、近くには黒塗りの車両が数台。


「一緒に生きれる道があればよかったんだけどね」


 それが、人の姿をした彼の口から発せられた最後の音。

 憐憫れんびんを求める声だったのか、わかれをつたえようとつむいだことだったのか、私には分からない。


 いつもピシッと伸びていた背中は白い針だらけの猫背になり、私の頭をそっとでてくれた手には鋭い爪と銀色の毛が生えている。


 僕も今着いた、僕も今起きた、それが彼の口癖だった。

 待ち合わせ場所や朝起きた時のベッドで、私と目があった時の口癖。

 いつも優しく泳いでいた黒い瞳が、今は真っ赤に変わり私をじっと見つめている。



蔦縛結束ボタニカル・キル、発射!』

国内アノマリー・呼称コード〝トゲビト〟確保!』

獣化じゅうか抑制剤よくせいざい……経口投与開始!』


 黒塗りの車両から現れた〝職員〟の集団が彼に〝対応〟を開始した。


 私は数分しの〝返事〟をするため、静かに唇を開く。


「実は私、知ってたの」


 知ってしまったから、この職場を選んだのだ。


「あるんだよ、一緒に生きれる場所が」


 人と怪異が共生できる組織、それが……機関。

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新人職員の初任務 トモフジテツ🏴‍☠️ @tomofuzitetu

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