第4話 愚者
北海道特区出張所を出ると人だかりができている。人だかりは抗議集会のようであった。首からプラカードを下げており「No 人体改造」「親からもらった体」などと書かれている。人だかりの代表者らしき人物はハンドマイクを持ち、交通人に呼び掛けている。
「マイクロチップは五感情報通信をする受信機であります。情報通信網にはアナログ、デジタル、どんな形式の信号でも伝達することができます。古くは1945年前後に発明されたインパルス・アレー・アンテナを使い空間中にインパルスを発生させている。
では、空間にインパルスが飛んでるのか。データーはあるのか。答えは否であります。インパルス・アレー・アンテナは衛星放送の周波数に形を変えています。衛星放送の15GHzの波長は10mm前後の金属に共振し、高い電圧を得ることができる。衛星放送と我々に何の関係があるのか。虫歯に使う金属なら可能だ。虫歯に使う合金を使い、アンテナ化している。どうして、虫歯治療用金属なのか。虫歯治療用金属は合金が使われている。合金はイオン化傾向の差で薄い塩水の中に入れておくと電子が少ないほうに移動する現象が起こる。口腔内は微弱な電流が流れます。これはガルバニー電流といいますが、衛星放送の信号と干渉して高い電圧を得ている。
インパルスを空間に発生させてるのは誰か。衛星放送で宇宙から攻撃してるのは誰か。犯人は北海道特区出張所だ。もう一度、繰り返す。犯人は北海道特区出張所だ。北海道特区出張所は我々を密かに眠らせて、脳にマイクロチップを埋め込んでいます。行政、司法を巻き込み訴訟を握りつぶしている。権力が被害者に酷いことをする。権力は何も気づかない。
では、北海道特区出張所の職員の話しを聞いてください。」
化粧気のない女性がハンドマイクを渡された。
「私は北海道特区出張所で事務員をしていました。事務仕事で電磁波攻撃のメールの受付係をしていたことがあるんです。北海道特区出張所の中に電磁波送信業務があるのかは知らないんですけど、電磁波攻撃を受けてるという苦情のメールは記録に残さずにゴミ箱に捨てるように指示を受けました。確かな所は知らないですけど、苦情は無かったことになってるのは事実です」
根本平等は何だかよく分からない感情に襲われた。あの辛そうな表情は何だろう。あれはオウンゴールをやった時の顔だ。お前なんて止めろというのはチームメイトに言ってはいけない。あんまり味わったことがないのでかける声が出ずに黙ってしまう何とも気まずい感じ。国税庁関係者が犯人だって言われてるんだけど、俺が助けたら俺の仲間が捕まるってことだよな。何が悪いか分からないし、置いておくか。
アーテーの谷 間何歩 @hazamanannpo
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