第3話
二人は再会できたことに感激した。
「加奈さんじゃない」
「優一さん、どうしてここへ」
二人は互いの想いを話した。優一は貧しくとも幸せだった。愛情に恵まれない加奈はそれが羨ましかった。そして、加奈は今日の出来事を話した。
「優一さん、高級なフランス料理とうどんは、どちらが美味しいと思いますか?」
「それは、フランス料理に決まっているでしょ」
「確かに、フランス料理は美味しいです。でも今日は運転手と安いうどんを食べました。私にとっては、一人で食べるフランス料理より、誰かとたべるうどんの方が美味しく思えたのです」
「そうだったんだね」
「はい」
「僕は母とたまたま、今日はうどんを食べたよ。加奈さんの言う通り美味しかったよ」
「私は優一さんが羨ましいです」
「そうなんだね。僕は貧乏な生活を送ってきたし、高校卒業だったから、加奈さんが羨ましいけどね」
「ないものねだりですね」
「そうだね。よければ、どこかに座ろう」
「はい、浜辺に座りましょう」
「浜辺だとスカートが汚れるよ」
「いいのです。優一さんと一緒にいられるなら」
「僕もだよ。そういえば、日が沈んで星が輝き始めたね」
「はい。とてもきれいですね」
「そうだね。でも、僕は加奈さんの方がきれいに見えるよ」
「そのような恥ずかしいことは言わないでください。優一さん、いろんな女性にそのようなことを言ってらっしゃるのではないですか?」
「それは違うよ、本当のことだよ」
「優一さんも素敵です」
「加奈さん、初めて出会った時に誰かに愛されたいって言ってたけど、僕はこの気持ちが、人を愛するということに気づいたよ」
「でも、出会ったばかりなのに、恥ずかしいです。私も同じ気持ちです」
「加奈さん、両目を両手で隠してみて」
「どうしてですか?」
「いいから」
「はい」
時は静かに流れていった。二人の邪魔をするものは存在しなかった。
「優一さん、それじゃ、私の胸に手をおいてください」
「どうして?」
「いいですから?」
「ほら」
「聞こえますか? 私の鼓動が?」
「ああ、聞こえるよ。波の音と重なって聞こえるよ」
「私は生まれて初めてのことです」
「僕もこのような体験は初めてだよ」
「私は男性を好きになったことはありませんが、それはどういう意味だと思いますか?」
「僕も初めてだよ。過去に恋をしたことはあるけど、こんな気持ちになったのは同じだよ。よくわからないけど、生まれてきて本当に良かったとおもうよ。加奈さんはどう思うかな?」
「私も同じ思いです。優一さんと出会えてよかったです」
「不思議だね。月夜で会って、それだけなのにこのような気持ちになれるのは、何か運命的なものを感じるよ」
「そうですね」
気がつくと僕は彼女を抱きしめていた。抵抗することなく、僕の胸の中にいた。
「優一さん、このままでいてください。これほど、人の温かみを感じたのは初めてです」
「わかった」
「優一さん、私のどこが好きですか?目ですか鼻ですか口ですか?」
「加奈さんのすべてだよ。それじゃ、僕はどうかな」
「私も同じ気持ちです」
群青の果てに 虹のゆきに咲く @kakukamisamaniinori
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