チョコを渡したい!
秋犬
チョコを渡したい!
明日はバレンタインデー。
この日のために買った可愛い箱を私は取り出す。
ピンクと紫のストライプに、黒い星が散りばめられている。
この可愛い箱にいっぱいチョコを詰めて、明日学校に持っていくんだ!
みんなでチョコパーティーするんだから!
私はチョコ作りに取り掛かる。
製菓用のチョコにお砂糖、生クリーム、ナッツとアラザン、そしてチョコペン。
湯煎して型に流し込めば、私だけのオリジナルチョコの出来上がり!
あとは冷やして固めて、明日箱に詰めるだけ。
楽しみ楽しみ。
ところが翌日。
あの可愛い箱がない!
学校で工作に使うからって弟が勝手に持って行っちゃったんだって。
お母さんは「その辺に置いておくあんたが悪い」って弟の肩を持つ。
そりゃないよ!
私はせっかく作ったオリジナルチョコを前にがっかりする。
メソメソする私にお母さんが包装用のビニールの袋とリボンをくれた。
「これで包むだけでも可愛く見えるからやってみな」
私は泣きながらチョコをビニールに入れて、リボンで結んでいく。
ツルツルしてすごく難しい。
箱に入れるだけなら簡単なのに、ビニールでリボン結びなんて考えてなかった。
弟、帰ってきたら殺す。
何とか時間ギリギリまでかかって全部ラッピングできた。
箱に入れるよりかさばって嫌だな。
でも頑張って結んだリボンはとても可愛くて、これはこれでいいかなって思えた。
休み時間、チョコの交換会で私はみんなにチョコを配った。
1個1個包装されてる私のチョコは大人気だった。
「わ、女子がお菓子持ってきてる」
「センセーに言ってやろ!」
うるさい男子が来た。
これだから男って嫌い。
私たちは男子を追い返した。
でも、私はそっと女子の輪を抜け出して男子を追いかける。
そして思い切って声をかける。
「あ、あの」
「なんだよ」
「先生に言わないでね、これ口止め料」
私はきれいに包装したチョコのひとつを渡す。
「わかったよ、サンキュー!」
そう言ってにっこり笑うと、男子たちは群れて走って行った。
遠くで何か囃し立てるような声がするけど、気にしない。
すごくさりげなくチョコを渡せたから、それでいい。
本命チョコなんて諦めてたのに。
箱で友チョコパーティーをやってたらこんなふうに渡せなかっただろうな。
弟、お母さん、サンキュー!
チョコを渡したい! 秋犬 @Anoni
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます