仲良し?兄妹漂流記Ⅳ
舞波風季 まいなみふうき
第1話 漂着した箱
なんだかんだと忙しかった一日が終わり、
翌日俺は、顔に朝日を感じて目が覚めた。
伸びをしてゆっくりと起きようとしていたところへ、
「お兄ちゃん、朝だよ!」
と、けたたましい璃々香の声が飛んできた。
「わかってるよ……」
「お姉さんたちがね、
「ああ、そういえば……」
昨日は普通に人間の姿だったな。
「それにしては昨日、俺達を見ても特に驚いた様子はなかったな」
「だって、お兄ちゃんが寝てる間に私が迎えに行って説明したもん」
と、驚かなくて当然じゃん的な様子の璃々香。
それにしてもと思いよくよく聞いてみると、最初は驚いたものの、突如として泉の精霊が姿を
「それにね、ルミるんとユリりん、あ、お姉さんたちのハンドルネームね、で二人は姉妹なんだって」
「やっぱ姉妹なんだな」
「うん、でね、ルミるん達と私達って違ってるんだよね」
「違ってる?」
いきなり話が飛んでないか?
「うん、私達は海に放り出されて気がついたら島に着いてたけど、ルミるん達は途中でトンネルみたいなところを通ったんだって」
「トンネル!?」
何だそれ、ちょっと恐いな。
「うん、だから不思議なことも受け入れやすかったんだろうって、精霊様が言ってた」
「なるほど」
「とにかく行こう、早く!」
璃々香に腕を引っ張られるようにして泉に向かうと、二人のお姉さん、ルミるんさんとユリりんさんが泉の精霊の前に立っていた。
「おお、来たな」
俺達に気づいた精霊が言った。
「それでは始めようかの」
そう言うと精霊は静かに目を閉じた。
すると、
「ねえねえ、二人は何になったの?」
璃々香が駆け寄って訪ねた。
「私は猫、山猫かな」
背の高い方の女性、後で聞いたらこちらがルミるんさんだそうだ。
「私は狼」
で、こちらがユリりんさん。
「すごぉーい、かっこいいねぇーー!」
璃々香はそう言いながら二人を交互に見て、嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねている。
その時初めて俺は、璃々香に
「璃々香には尻尾があったんだな」
「そうだよ、今まで気づかなかったの」
「ああ」
(そうか、俺には尻尾がないから……)
俺は自分の尻のあたりに手を当てて思いながら、
(二人はどうなんだろう……?)
などと、思っていると、
「ルミるんとユリりんにも尻尾があるからね!」
と、わざわざ見る必要はないとばかりに、璃々香が言った。
「そ、そうなのか」
尻尾を見ようとすれば必然的に二人の女性の下半身を後ろから見ることになる。
(やばいやばい……)
璃々香にスケベだの変態だのと言われるのは構わないが、会ったばかりの女性にスケベ変態認定されるのは絶対に避けたい。
(話題を変えよう……)
そう思って俺は精霊に
「さっき璃々香から、お二人はトンネルみたいなところを通ってきたって聞いたんだけど……」
「そうじゃな」
精霊が答え、二人も
「でも俺達はトンネルなんて、なあ……」
俺が璃々香に振ると、
「うん、通らなかった」
璃々香も頷きながら言って、
「けど……」
「けど?」
「うん、今思い出したんだけど、なんだか一瞬、風の中を抜けたような感じがしたと思う」
「風を……?」
俺は聞き返しながら、海を
言われてみれば、という気はするがはっきりとは思い出せなかった。
璃々香は大雑把な性格の割に
特に気圧の変化には敏感なようで、
「俺は気づかなかったが、璃々香が言うならそうなんだろうな」
「ふふん!」
腰に手を当ててドヤ顔の璃々香。
「ふむ、おいおい話すつもりではあったが」
精霊が話し始めた。
「この島は、というよりはこの世界はお主らのいた世界とは違う世界なのじゃ」
「「「「え!?」」」」
俺達は四人同時に声を上げた。
「考えてもみい、お
「それはそうだが……」
「いきなり違う世界だと言われても……」
俺と璃々香の言葉にお姉さん二人も頷いている。
「とにかく先のことは後で考えるとして、この世界で生きていくことを考えるのじゃ」
「「「「はぁ……」」」」
俺たちは精霊の言葉に渋々頷いた。
「で、早速じゃが」
俺達を見回しながら精霊が言った。
「浜に
「漂着物?」
「うむ、箱がいくつかじゃな。おそらくお主等の世界から流れ着いたものじゃろう」
「それってもしかしたら……」
そう言う璃々香の声には期待がこもっていた。
「うむ、生活に使えるものも入っているやも知れん」
穏やかな笑顔で精霊が言った。
「それは、
「だよね!」
「ですね!」
「早速見に行きましょう!」
こうして俺達四人は精霊の指示の
仲良し?兄妹漂流記Ⅳ 舞波風季 まいなみふうき @ma_fu-ki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます