本当にエロい住宅の内見(ゲーム化の噂あり)

@2321umoyukaku_2319

第1話

 その不動産屋が紹介する部屋には事故物件が多いというのがもっぱらの噂だった。 そんな変な話は知っていたけど、その不動産屋で僕としては不都合はなかった。何といっても、急いで引っ越さなければならなかったのだ。耐震強度に問題があると指摘されていた老朽マンションに住んでいたのだが、先日のスローライフ地震で壁に大きなひびが入ってしまって、遂に取り壊しが決まった。家賃が安くて良かったのに……残念でならない。だけど、命より高いものはない。幸いなことに、ちょっと補償が出たので、それを元手に僕は新しい住居を探すことにした。

 それで近くの不動産屋へ行って、そこの従業員に案内されて、新居候補を巡って回った。どこもボロかった。しょうがないと言えば、しょうがない。家賃が安いところばかりピックアップしていたからだ。

 候補に挙げていた最後の住宅の内見を終えた僕は、案内してくれた不動産屋に尋ねた。

「もっと他にいいところ、ありませんか?」

 不動産屋は答えた。

「ご希望の予算では、こんなところですよ」

 渋い顔をする僕に不動産屋は訊いてきた。

「もう少しお高いところはいかがです?」

 即答する。

「無理」

 こいつ家賃を本当に払えるのか? という疑念の影が不動産屋の表情によぎった気がした。僕は慌てて言った。

「ちょっと待って、それじゃさあ、逆にお勧めできない物件を紹介してよ。家賃の安いとこ。そう言うところの方が逆にいいかも。諦めがつくって感じで」

「お勧めできない物件なんて、うちにはありませんよ」

「またまた! 本当はあるんじゃないの? たとえば、事故物件とか」

 そう言われて、不動産屋は考え込んだ。

「事故物件じゃないんですけど、お化けが出ると言われている部屋はありますよ。借り手が現れないところです。行ってみますか?」

 即答する。

「行こう!」

 その部屋は普通のマンションの一室だった。霊気漂う不気味な部屋なんてもんじゃない。陽あたり良好で、居心地が良さそうだ。

「悪くないんじゃない」

 僕は上機嫌で言った。ちなみに独り言だ。不動産屋は中に入っていない。玄関にすら足を踏み入れなかった。外の廊下しかも、離れたところで待っている。ビビりすぎだろ。僕はニヤッと笑った。

 人の気配を感じたのは、その直後だった。笑顔を凍らせて振り返る。誰もいない。何だ、気のせいか……と安心して俯く。ぎょっとする。床に影がある。二つの人影だ。一つは僕だ。もう一つは、誰だ? その場に立ち尽くし、シルエットを凝視する。僕の横に影の主は立っていた。背は僕より低い。ほっそりしている。女性だ。その体は僕の方を向いている。僕は恐ろしくなった。隣にいるのだから、横を見たいけど、怖くて見られない。必然的に床の影を見続けることになる。その結果、影の女はスタイル抜群だと分かった。横を向いているから胸の膨らみがはっきり分かったのだ。僕はチラッと横を見た。影の本体の女を見たかったからだ。すると、僕の目の下に、エロい谷間が見えた。これは、父と父の間で発生する谷間では? ああ、興奮して漢字を入力ミスした!

 ガン見しようと顔を向けたら、胸の谷間は消えた。足元の影まで消えた。

 僕は落胆した。ほんのわずかな接触だったけど僕は、その影の主の肉体に魅了されたのだ。もう一度、あの影の女に会いたい。そのためには、ここで暮らすのが一番だ。ここしかない! ここに決定!

 僕は外で待っていた不動産屋に、ここを借りたいと伝えた。向こうは驚いた。

「出なかったんですか?」

「出たけど、まあ、許容範囲だ」

 不動産屋は声にならない悲鳴を上げた。呆れるのと恐れ入った気持ちが半々で混ざったような目で僕を見る。

「怖くないんですか?」

「あんまり」

 不動産屋は契約を急いで済ませた。僕の気が変わらないうちにと思ったのか、僕と関わりたくないと思ったのか……そのハーフハーフかな。僕としても、不動産屋から色々と訊かれたくなかったので、それで好都合だった。

 そこに住んで分かった。女の幽霊との同居は生きている女と比べて快適だ、と。何しろ死んでいるのだから、害はない。一方、生きている女は有害だ。あーだこーだとうるさい。反論すると、さらに怒り狂う。こちらも頭にきて殴ったら、すぐに死ぬ。壊れやすいにも程があるだろ。過酷な出産に耐えるタフネスさを軽い暴力に対しても示して欲しい。死体を処分するのは大変なんだ。これまで何体も始末してきたけど、いつもへとへとになる。もうやだ。

 その点、この部屋の女幽霊はいい。どうやら僕に気があるような気がするのは、きのせいか(←変な日本語だけど気にしない気にしない)。チラチラ見える姿からすると彼女はエロ漫画みたいな半裸っぽい恰好のようだし、こっちを誘っているように思える。交渉したら性交渉可能かもしれない。どうやって交渉するか分からないけど。もしも肉体関係を結べたら素敵だ! それが、どういう風になるか、まだ見当がつかない。女幽霊とのナニが上手くいったら皆様に、あらためてご報告したいね。場所は、なろうで(←違うだろ)。

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