第10話 †金髪の代償†

中学を卒業したおいらは、自由を手に入れたと思った。


卒業式の日に帰宅早々、買ってあった髪染めキットで髪を金髪に染めた。

ようやくイケてるやつの仲間入りができたと思った。


おいらの親は、お堅くクソ真面目だったので、先に帰宅した母はびっくりして、父が帰宅する前になんとかしなさいと大慌てした。


おいらは、高校入る前に戻すから、春休みの間だけなら問題ないだろう、と母に言った。


帰宅した父は、おいらの髪を見るなり、顔を真っ赤にして激怒し、おいらを殴った。


正直、まったく想定外だった。

己のことにしか興味のない父に、生まれて初めて殴られたのだ。


父と母は、すぐに黒染めを買ってくるといって速攻で出かけて行った。


せっかく頑張って染めたムラだらけの金髪が、わずか数時間で終わってしまうとは。

切なくなったおいらは、せめて親が帰ってくる前に記念写真だけでも残そうと思った。


当時は、デジタルカメラが今ほど普及していなかったので、中学生のおいらが使えるスキルは「写ルンです」という、写真屋で現像する必要がある使い捨てのフィルムカメラのみであった。(最近また復刻してますが)


使い捨てカメラを買うにも、現像するにも、写真にするにも、ひと月の小遣いを上回るお金がかかる。どのように自分が写っているのかもわからないそのフィルムカメラで、おいらは写真を撮ることにした。


どんな表情をすれば1番かっこいいか考えようと鏡を見たおいらは、びっくりした。

さっき父に殴られた口の中が切れて、出血していたのである。



‥‥


やっべ!!!かっけぇー!!!!!!!(((o(*゚▽゚*)o)))


はい、思考回路がおかしいですね。

もはや、父に殴られたという怒りやショックなどはそこにはなく、おいらは「キンパツで、ケンカして、血が出ているヤツ"みたいなヤツ"」の称号を手に入れた。


言うまでもなく、おいらは血が出た下唇を突き出し、口を「ロ」の字にしたパンクロッカーみたいな顔で写真を撮った。



後日。

黒染めに戻されたおいらは、現像を頼んでいた行きつけの写真屋に写真を取りに行った。


「お写真、こちらで間違いありませんでしょうか」



あ、待って


やばい




待って



待って!!!!


やめろ!!!!!!!!!やめてくれー!!!!!!!!!!!!!!!!!!




行きつけの写真屋のお姉さんが、おいらの撮った、色んな意味で痛々しい「不良ぶった真面目野郎」の写真を受付台に広げたのであった。




        〜完〜



まだまだ痛いネタはたくさんあるのですが、今回は6000文字以内という制限のため、この辺で。



あざーっす!!!

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