第17話 「Raising cup顔合わせ配信 延長戦」
「本日、アタシが選んだゲームはこちら!」
デェスコの画面共有を見ると、【the after planet】と書かれているゲームのダウンロード画面が映っていた。その画面の上側を見ると───
「高っ!7500円!?」
「そこもクソゲーポイント高いんだよね」
まだどんなゲームか分からないが、7500円は少し高いと思う。いや、最近のゲームはこれぐらいな気もするな。
「もちろんお金はアタシが出します!」
「い、いや流石に…俺は払いますよ」
「そんなにやってほしいって事?」
「アタシはみんなにクソゲーの楽しさと辛さを知ってほしいだけだよ」
楽しさだけなら分かってあげたいんですけどね……
「なんか不穏なレビューが見えるんだけど…」 「やるまで分からんだろうが!」
水無瀬さんが言った不穏なレビューとは滅多に見ない、圧倒的に不評という評価だった。
「Stoomで圧倒的に不評ってヤバくない?」 「評価は人によって変わるから…うん。大丈夫だよ」
「初めて見たんですけど…」
Stoomは数多くのゲームを配信していて配信者達はお世話になっている。俺もその1人だ。何回も他のゲームのレビューを見たことはあるが圧倒的に不評の評価はマジで1回も見たこと ない。
「それではみなさん始めましょうか」
「しょうがないなぁ」
ダウンロードが終わり、遂にその世界に足を踏み入れる。
「まずはフレンドになりましょ」
「おっけー」
【the after planet】はサバイバル・オンラインゲームで、ある街に出撃してアイテムを拾って戻ってきたら良いらしい。持って帰って来たアイテムは売る事ができ、その金を使って街を復興させて行く、そんなゲーム内容だそうだ。これだけ聞くと簡単に聞こえるが1番大変な所は途中で他のプレイヤーに倒されてしまうと一部のアイテムを除いてロストしてしまう。公式サイトとグーグレ先生参照。
「装備買いに行きますよー」
「分かりました」
「りょうか〜い」
2人とフレンドになった後、戦う為に装備を買いに行く。最初に150万円文のお金が支給されるらしい。
「結構色んな種類あるね」
「最初の武器は銃が良いよ〜」
様々な種類の銃の他にも剣などもあった。
「アーマーと弾も買ってね〜」
「余ったお金は貯金する?」
「もちろん」
弾やアーマー、武器を買うと大体120万程吹き飛んだ。最初にこんな使っていいのかは分からんがまぁ良いだろ。
「皆様、装備は整えられたでしょうか」
「は、はい…!」
「できたよ~!」
「それでは出撃!ゴー!」
──ロードが始まり2分程経つと、荒廃した街に3人の戦士が降り立った。
「ま、まずはどうするんですか?」
「とりあえず動き回ろ」
FPSゲームは色んな物を遊んだ事があるがこういう感じのは初めてなので楽しみだ。
「うぁぁ!助けて〜!何こいつ!」
「そいつ倒して!」
「た、倒しました!」
水無瀬さんがモンスターに襲われていたので助ける為に銃弾をぶっ放す。すると、思ったよりも簡単に倒す事ができた。
「ひかりちゃん!何なのこいつら!」
「そいつらはデビルだね。あんまり強くないよ」 「違う、そうじゃない」
「あぁ、このゲーム人以外もいるからね」
「言うの遅いって〜」
「そいつらは倒したらアイテム落とすから頑張って倒そうね!攻撃はしてくるから気をつけて!」
初耳です。グーグレ先生も教えてくれてないって!
「このアイテムどんな感じ?」
「…え?グラボ…?」
「良いの〜?」
「今すぐ脱出ポイント行こう!」
「そ、そんなに良いんですか」
「バカ高いアイテムだよ!絶対にイツキは死なないで!」
なんでそんな良いアイテムが雑魚敵なはずのデビルからドロップするんですかね。
「底確率でドロップする感じなの〜?」
「いや、普通ならしないはずなんだけどな〜サイト見る限りはデビルからはドロップしないらしいんだよね」
「で、でも良かったんじゃないですか?レアアイテムですし」
「それはそう。だから帰るよ!」
街に降り立って約3分、早々に戦場から帰る事になった。
「走って!走って!」
「なんか全然走れないんですけど!」
「お、同じく!」
「何でぇ!」
なんか全然走れない。ちゃんとキーは押してるのに…!
「着いた!ここで7秒ぐらいO押して!そしたら帰れる!」
「おっけおっけ!」
脱出ポイントに到着する事ができた。周りに敵はいなさそうなので簡単に脱出できそうだ。
「脱出できた〜!」
「良かった〜グラボ売りに行こう!」
脱出できたたので今さっき入手したグラボを売りに行くらしい。
「結局グラボってどのぐらいなんですか?」
「1つでなんと240万円です」
「高っ!僕達の装備分じゃん!」
今さっきも言ったけど何でそんな高いアイテムが雑魚敵から出てくるんだよ…
「ここが安全地帯です!ここで物を売れます!ついでに物を保管できる場所もあります!」
「じゃあグラボ売って来るね〜」
「どうぞ~。アタシ達は保管庫行くわー」
「分かったー」
すぐに脱出したのであんまりアイテムを取れていない。だから保管するアイテムはあんまりないな。そんな事を考えながら星乃さんに着いて行くと──
「な、何で撃たれてるんですか…?」
「あ、多分バグってるだけだよ。安全地帯はダメージ通らないから大丈夫」
めちゃくちゃ他のプレイヤーに撃たれた。ダメージが通らないから大丈夫だと言うが本当なら武器を使う事は出来ないらしい。武器が使える時点で駄目な気がする。
「えぇぇー!何で死んだの!ダメージは喰らわないって書いてたじゃん!」
「お、俺も死にました!」
うん。即落ち2コマである。安全地帯だからダメージが通らないものだと思ってたわ。安全地帯ってなんだっけ?他のゲームなら大丈夫だったんだろうが生憎これはクソゲーマニアが選んだクソゲーだ。そういう事があるのを念頭に置かなくてはならないのかもしれない。
「これは初めての死に方だなー…イツキそっちは大丈夫?」
「うん。大丈夫だけど…これはどうしたら安全地帯以外の場所に行けるの?」
「多分奥の方に出撃できるポイントがあるからそこに居といて」
「あ、そこにあった。じゃあ待っとくね」
「よろしくー」
俺と星乃さんは死んでしまったのでタイトル画面に戻される。
「何かアイテムロストしてないわ」
「持ってた武器残ってますね」
このゲームの醍醐味無くなってない?倒されたらアイテムロストする緊張感が売りのゲームだと思ってたんですけど。
「じゃあもう1回出撃だー!」
「おー!」
水無瀬さんと合流して2回目の出撃が始まった。俺と星乃さんの装備は変わらずで水無瀬さんは武器とアーマーが少し良くなった。
「次はもっと長く探索しよ」
「そうだね~さっきは早すぎたからね」
荒廃した街に戻ってきた。今回は前回よりも長い間探索するらしい。
「プレイヤーいたら倒しちゃっていい感じ?」 「もちろん。倒してアイテム奪っちゃおう」
街から少し離れ、森の中へと向かう。森にはどんなアイテムがあるか分からないが今さっき拾ったアイテムは中々に高価そうだ。もしかしたら街より森の方が良いアイテムが落ちているのかもしれない。
「な、なんか物音しません?」
「ん?…横にモンスター!」
「うぁぁ!」
森の中はとても暗くモンスターや敵を視認するのが難しい。だからモンスターの接近に全然気付けなかった。
「危な〜」
「やっぱりグラボは出ないか…」
「出る方がおかしいと思いますけどね…」
普通に水無瀬さんがモンスターを処理した。ポンポン高価なアイテムが出てきそうなのがこのゲームの怖いところだ。
「そこのテント漁って来るね〜」
「じゃ、じゃあ俺はそっち漁ります」
キャンプ場っぽい所に到着した。そこそこ広く漁れる場所も多そうだ。
(なんか、足音聞こえね?)
「え!?なんかいるんだけど!」
「マジで!?頑張って倒して!」
「無理無理!」
「か、カバーします!」
カバーに向かうが間に合わず水無瀬さん倒されてしまった。
「イツキの仇ー!…うぁぁ〜!」
俺よりも近くにいた星乃さんが水無瀬さんの仇を取ろうと動いたが一瞬で頭を撃ち抜かれ倒されてしまう。めっちゃ情けない声だった。おおよそvtuberが出す声ではなかった。
「頑張ってカイさん!」
「な、なんか全然倒れないんですけど…!」
星乃さんが倒された後、すぐに敵に銃弾を放つ。何発か相手の身体に当てたが倒れる気配がない。
「あードンマイ!」
「ちょ、ちょっとこの人強すぎないですか?」 「多分Cの者だよ。気にしない方が良い」
「あーなるほどね。通りで全然死なないわけだ」
「やっぱこのゲームは多いんだね〜」
「……この話は辞めときましょう」
「そだねー。次行こー!」
チートの話は辞めといた方が良い。うん。マジで辞めとこう。古傷が痛い。
「やっぱりアイテムロストしてないね〜」
「…え?待って!?保管庫に入れてたアイテム無くなってるんだけど!?」
「嘘!?」
「本当だよ!」
「うわ!マジだ!アタシの大事に取っておいたレアアイテムが〜!」
何故か保管庫に入れておいたアイテムが全部消えている。そこまで多くのアイテムを入れている訳ではなかったので俺は精神的ダメージが少ないが、レアアイテムを入れていた星乃さんは 大きなダメージを受けていた。
「なんかめっちゃ運が悪い気がしてきたわ…」 「やっぱり今年のおみくじ凶だったからじゃない?」
「そうかもしれない…」
このゲームを最初に始めた時はクソゲー感をあんまり感じなかったが段々とクソゲーらしい部分が見えてきた。……クソゲー感ってなんだ?俺は何を言ってるんだ…?
「じゃあもっかい行こ〜!」
「イツキ意外とノリノリじゃない?」
「なんか楽しくなって来ちゃった」
「ついにイツキもクソゲーが分かってきたか…」
その後も数回プレイしたがちゃんとしたプレイヤーを見ることはなかった。そして何個もバグに遭遇した。今さっき遭遇した保管庫のアイテムが消えるバグ以外にマップ外に飛ばされる、急に100体ぐらいモンスターが現れるなど様々なバグを経験した。やはりこのゲームはクソゲーだったらしい。
「さーもう8時間はやったし終わろ〜!」
「まだまだやれるけどなぁ」
「す、すいません流石に終わりたいです」
「そう?じゃあ終わろっか。配信切ってきまーす」
「僕も切ってきまーす」
abcxを4時間して、【the after planet】も4時間した。abcxだけなら無限にできるが他のゲームも合わせてやるとなると流石に体力が持たない。まだやろうとしてる星乃さんは体力バケモンなのかもしれない。
「みんなお疲れ様〜」
「お疲れ〜」
「お疲れ様です」
配信を終了し、配信モードから雑談モードに切り替わる。
「いや〜まだ遊べたクソゲーだったな」
「楽しかったなぁ。まぁ、もうやらないけどね」
「マジ?大会終わったら2次会でやる気だったんだけど」
「流石にやらないよ。他のゲーム探しとく」 「ありがと。アタシはクソゲー以外を出せる気しないわ」
星乃さん的には今回のゲームはまだ遊べるクソゲーだったらしい。俺も水無瀬さんと同じくもうやらないだろう。
「じゃあ僕寝るわ〜おやすみ〜」
「俺も寝ます。今日はありがとうございました」 「おやすみ〜」
数分の雑談が終わり、水無瀬さんが寝るそうなので俺も寝る事にした。今日はバイトあるし頑張らないとなぁ。
side:イツキ
「寝る前に連絡しーとこ」
イツキ『Raising cupのコーチ頼めますか?』
この大会は絶対に勝ちたいからある人にコーチを頼んだ。カイさんも知っている人だ。……返信早いな。もう深夜なのに。
??『私がやっていいんですか?』
イツキ『やってもらえるんですか!?』
??『良いですよ。私ただのストリーマーですけど』
イツキ『ありがとうございます!後でスケジュール送りますね!』
良かった〜他のチームに招待されたりしてなかったぁ。
あっ、安心したら眠気が一気に……おやすみなさい。
ゲームが上手いコミュ障底辺配信者が成り上がる話 @guratan-23
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