第16話 「Raising cup顔合わせ配信」
「みんな〜顔合わせ配信始めるよ!」
コメント:来た〜!
コメント:こんちゃ〜
コメント:きちゃ!
「Raising cupのメンバーでabcxやってくよ〜」
コメント:そろそろだっけ?
コメント:もう2週間ないんだよね
コメント:男の人誰?
「じゃあ、自己紹介していこっか」
「は、はい」
「おっけ」
「「…えっと」」
何とか勇気をだして声を発するとめちゃくちゃ声が被ってしまった。え、気まず…
「はは!じゃ僕からいくね。水無瀬イツキです!今回のRaising cupのリーダーです!よろしくお願いします!」
コメント:うぇーい
コメント:頑張って!
コメント:リーダーだったんだ
「じゃ、次はひかりちゃんどうぞ!」
「おけ!星乃ひかりです!あんまりabcxは得意じゃないけど頑張って上手くなるんでよろしくです!」
コメント:がんばれ〜
コメント:クソゲー以外もやるんすね
コメント:↑クソゲー中毒者かなんかやと思ってる?
「誰がクソゲー中毒者だ」
「えっ?そうじゃないの?」
「イツキってアタシの事どんな人だと思ってんの?」
「クソゲーが大好きな人」
「まぁ、合ってるけど…なんかだよね?」
もちろん俺はこの会話に入り込めない。怖いぜ彼女達と会話するのがな。
「次はカイさん自己紹介よろしく!」
「は、はい分かりました」
俺の自己紹介の番が回ってきた。緊張しまくりではある。でも、するしかない。がんばれ俺。
「えっと…は、初めまして如月カイです。こ、今回水無瀬さんに誘われて初の大会参加です。よ、よろしくお願いします」
コメント:ちゃんと喋れて偉い!
コメント:この人強いの?
コメント:↑エンペラーまでいってるらしいぞ
コメント:がんばれ
コメントを見る限りは大丈夫そうだ。多分。知らんけど。
「僕たち3人でRaising cupを戦います!」
水無瀬さんの実力はなんとなくわかっているが未だに星乃さんの実力は未知数だ。今回の顔合わせ配信でちゃんと分かっとかなきゃな。
「じゃあ早速abcxやる?」
「もちろん!ひかりちゃんは今ランクどこ?」 「えーっと……ゴールドです」
「おっけー!カジュアルやってこ!」
「…もしかしてランクやるつもりだった?」 「聞いてなかった僕が悪いから!ごめん!」 「謝られるのもなんか違うって!」
うん。今さっきも言ったけど会話に入れねぇ!2人の会話スピードが思ったよりも早い!どうしよ……
「カイさーん大丈夫〜?」
「えっ、あっ、はい」
いや、大丈夫じゃないんだけども。反射的に大丈夫と言ってしまった。
「イツキー如月カイさんってコミュ障?」
「あれ?言ってなかったっけ?そうだよ!」
めちゃくちゃ直球ですね。びっくりしましたよ。その通りだから反論なんてできないが。しかも答えてるのは俺じゃなくて水無瀬さんだし。
「あ、な、なんかすいません」
「謝る事ないって!世界には色んな人がいるからね!」
「…そ、そうですか」
「ゆっくり話せるようになってこ!」
これさぁ…水無瀬さんに介護されてない?俺と星乃さん話して無さすぎですやん。
「おっ、イツキ〜始まるよ」
「入れた!」
マッチングが完了し、キャラ選択画面に移る。
「み、みなさん何使いますか?」
「僕はいつも通りレイサーかな〜」
「アタシは何でもいいけど…今日はコングフィストかな」
「わ、分かりました。俺はハンブラー使いますね」
よし!俺から会話できた!成長してるな!これは会話というのか分からないけど。
「今日はバンバン激戦区降りるよ〜!」
「アタシすぐにやられるんじゃない?」
「コングは初動強いし大丈夫だよ〜」
確かにコングフィストは他のキャラと違い格闘ダメージが35になる。それ故に初動は強い。まぁ、拳が当たればな!
「やばいやばい!めっちゃいるって!」
「頑張って!ひかりちゃん!」
「おい!先輩を置いてくなよぉ!助けて〜!」 「ははは!」
激戦区の街に降りたはいいが星乃さんは降りた所が悪かったらしくボコボコにされてしまっている。そしてそれを見ながら 爆笑してるのは水無瀬さん。もしかして水無瀬さんってSなんですか?
「こ、こっちやりました…!」
「ナイス!こっちももうすぐ終わるよ〜」 「え、もしかして死んだのアタシだけ?」
「そだね。……ナイストライ!」
「煽ってんの?イツキ君や」
近くにいた敵は武器を持ってなかったらしく楽に倒す事ができた。水無瀬さんも近くの敵をもうすぐ倒せそうだ。唯一倒されてしまった星乃さんは水無瀬さんに煽られていた。
「ほ、星乃さん、リスポーンキー取るので大丈夫ですよ」
「ほんと?如月さんはイツキと違って優しいねぇ」
「僕が優しくないって事!?冗談だよね?」 「いや、優しいと思った事全然ないけど…如月さんは?」
「え?」
ここで俺に振ってくるんかい!困るって!どう答えればいい?いや、まぁ普通に答えるか。
「お、俺は優しいと思いますけどね」
「だよね!僕は優しいって!」
「よし。お前ら後でクソゲーの刑な」
なんですかクソゲーの刑って。怖いんですけど。いったい何されるというんだ。
「り、リスポーンさせますね」
「ありがとう〜助かる」
激戦区での戦闘を終えて星乃さんをリスポーンができる場所に到着する。abcxでは倒された後、味方が生存していたならばリスポーンキーというアイテムを獲得することができる。そしてそれを特定の場所に持って行くと、倒された味方をリスポーンさせれる。もちろん倒された後ずっとリスポーンキーが残るわけではなく、2分程経つと消える仕様になっている。ずっと残ったままだと強すぎるからだろう。
「さて、どうしようか」
「武器探すわ〜」
「駄目でーす。そのクソザコショットガンで戦ってください」
「縛りプレイしろって言ってんの?」
「そうだよ」
「まぁ、いいけど。勝ったらなんかある?」 「何もないよ!頑張ってね!」
「よっしゃ!頑張るわ!」
やっぱりこの人達は配信者なんだな。急な提案でも面白そうだったら乗ってくる。…それにしてもそんな武器で縛っても大丈夫なのだろうか。星乃さんが使うショットガンは弱すぎて投げるモーションが追加されるぐらいだけども。
「アタシが今までどれだけのクソゲーに立ち向かってきたとお思いで?」
「流石に知らないな。どれぐらいなの?」
「アタシも分からん!」
「じゃあ何で聞いたの!?自分も答え知らないのに!」
いや、何で聞いたんだよ。
「クソゲーで鍛えた力魅せてやる!」
──この後普通に負けた。マジで本当に普通に負けた。あんな格好良い、いや、格好良くはないけど啖呵きっといて1番最初に星乃さんはやられていった。
「すいませんでした」
「い、いえそんな謝らなくても…」
「そうだね。あんな縛りしない方が良かったね」
「アンタがやれって言ったんでしょ!」
「あれ、そうだっけ?」
そんな他愛もない会話をしながら顔合わせ配信は続いていった。
──1時間半後
「ちょっとトイレ行ってくるわ〜」
「いってらっしゃーい」
星乃さんがトイレに行ってくると言ったと同時にガランゴロンと音がしてきた。
「えっ、何の音だ?」
「多分ひかりちゃんの部屋の音だね〜」
「ど、どういう事ですか」
「ひかりちゃんの部屋はめちゃくちゃ汚いらしいよ〜」
……嘘だろ。そんな事があるのか?てか、ミュートしないでトイレに行ったのか?すげぇな。あんな音がしたって事は部屋の中がカンカンでいっぱいなんだろうな。おそらくエナドリの缶だろうけど。
「ただいまー」
「早くない?手洗った?」
「そりゃもちろん」
「じゃあ部屋も掃除しようよ」
「それはいや。面倒くさい」
まぁ、そうでしょうね。面倒くさくなかったならちゃんと片付けてるだろうし。
「ひかりちゃんの家に行って片付けたいなぁ」 「良かった〜誰にも住所教えてなくて」
「運営さんに聞いてみるね」
「流石に言わないよ。…多分」
「だよね~」
水無瀬さんは掃除とか好きなのだろうか。というか事務所のメンバーは誰も星乃さんの家を知らないのか。
「今度会おうよ!ひかりちゃんの家で!」
「えぇーやだよ」
「あおいちゃん以外と会った事ないんでしょ?」 「そりゃそうだけど」
「全然誰とも会わないからAIとか言われるんだよ」
「え?AIって言われてるんですか?」
「言われてるけどAIじゃあないから!ちゃんと存在するからね」
AIって言われるぐらい誰とも会ってないのマジか。もう3年ぐらいvtuberやってるんですよね?それで会った事あるのはあおいさんだけなのか。よほどの事が無いと会ってくれないんだろうな。いや、俺自身は会う気は無いけども。
「じゃあ再開しよっか」
「おっけー」
ぬるりと雑談からゲームへと移る。既に1時間半はやっているが体力的には全く問題ない。だが、精神的には結構キツイ。初対面の星乃さんとあまり喋れてないかもだけど頑張って喋っているつもりではある。
「次は勝ちにいってみよ〜」
「り、了解です」
「お、やっと激戦区降りから開放される」
開始から1時間半経って、激戦区降りから変わるらしい。この1時間半では1回もチャンピオンを取れていないので一度くらいは取っておきたい。
「ここ降りるよ〜」
「はいよー」
水無瀬さんが指定した場所は激戦区ではないがそこそこ物資がある場所で敵もあまり来ない良いランドマークだ。
「敵いる〜気をつけて」
「うぉっ、危な!助けてヘルプミー!」
「い、今行きます……!」
星乃さんの近くにいた敵はなんとか倒していたが、体力がギリギリだ。なんとかして向かいたいが少し離れてるので間に合うか分からない。
「ごめん!やられたー!」
「だ、大丈夫です。倒しました」
「カイさんナイス〜」
間に合いませんでした。でも、残っている敵は倒せたのでOKです。今蘇生するのでちょっと待ってください。
「じゃあゆっくり移動してこ〜」
数分後、街を漁り終えたので移動の指示が出される。第1、第2の収縮は安地内だったので移動する必要がなかったが、流石に第3収縮で外れたので移動を開始する。ただめちゃくちゃ近いので焦って移動する必要はない。
「後7部隊だ」
「最近はなんか人数減るの速いね〜」
ランクマッチだとそうでもないが、最近のカジュアルマッチは部隊数が減るのが速い。単純に実力のある人が増えてきたのだと思う。
「痛っ!撃たれた!」
「あぁ〜チャースナだね」
「あの敵絶対にぶっ潰すから残しといて」
「おっけー!」
安地内に入った直後、チャースナことチャージスナイパーライフルを撃たれた。この武器は特殊でチャージしないと撃てないがそこそこの火力で遠距離からチクチクする事ができるので多くのユーザからウザがられている。俺ももちろん嫌いです。
#チャースナおもんな消せ
第4収縮開始時、残り部隊数−−−4部隊
「そこに今さっきのチャースナいるよ!」
「よし!倒しに行く」
部隊数が減り、安全地帯も狭まってきた所で先程俺たちをチャースナで撃ってきた部隊を見つけた。もちろん星乃さんは倒しに向かう。それに俺たちはついて行く。
「どりゃー!」
「いけ〜!全部破壊しろ〜!」
相手に近づいた所で星乃さんがコングフィストのウルトであるロケランを放つ。それに合わせて水無瀬さんはレイサーウルトを使う。ここまでされると相手は流石にボロボロだ。じゃあ逃げられないように、ハンブラーウルトでスキル封じときますね。
「いいね!カイさんナイスウルト!」
「アタシ達、チャースナ嫌いすぎでしょ…」 「し、仕方ないですよ。チャースナですし」
うん。チャースナだしボコボコにして良いと思う。体力ギリギリで回復してる最中にどれだけそれを撃たれて死んだと思ってるんだ。少しでも掠ったら死ぬ場面で撃たれすぎてマジで嫌いなんですよ。
「ラスト部隊だよ〜」
チャースナ部隊と絡んでいる間に残り部隊数が減っていた。
「来たよ足音するから気をつけて!」
相手もこちらと同じく、3人残っていてフルメンバーらしい。
「右にジャンキラーいるよ!」
「す、スモークほしいです……!」
「分かった!撃つね!」
俺はデジスレを持っているのでスモーク内で強気に立ち回れる。
「1人落とした!」
「ひかりちゃんナイス!」
こちらはアルティメットが溜まってないため、全てフィジカルで解決しなければならない。普通ならキツイけど、なんかいけそうだ。
「こ、こっちやれました」
「了解!僕の方もそろそろ終わるよ!」
「カバー行く」
星乃さんが水無瀬さんのカバーに向かった瞬間──
《YOU ARE THE CHAMPION》
「ナイスー!」
「な、ナイスです!」
「ナイス〜」
思ったよりも簡単に1位を取れた。今回の試合の印象がチャースナ部隊をぶっ潰した事しかないんだけど。
「カイさん。まだ時間はある?」
「え、あ、はい。あります」
「じゃあいっぱいできるね!」
「あっ、そうっすね」
まだ2時間も経ってない。俺はこの後を耐えれるだろうか。
──2時間後
「いや〜結構やったね。そろそろ終わりにしとく?」
「そ、そうですね」
19時から始めて現在時刻は23時前。そろそろ終わっても良い頃合いだ。
「……君たち何か忘れてないかい?」
「な、何をですか?」
なんかあったっけ?約束かなんかしたわけでもないし……。
「クソゲーの刑って言ったよね」
「え?マジでやるの!?」
「当たり前でしょ。つい最近出たクソゲーがあるんだよ」
…えーっと。これってもしかして終われない感じですか?既に4時間近くやってるんですけどね。
「始めようか、地獄を」
あっ、終われない感じですね。ありがとうございました。
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