第13話 5月2日

とうとうこの日が来てしまった。にこゴリとのデートの人だ。

デートなんて、2年以上していない。心臓が痛い。

く、くすりを飲まなきゃ。


これも後で断ろうとした。なんならドタキャンしてもいいかなって思ってた。

しかし、合コンの次の日に先輩からの追撃がくる。

「悪い人じゃなさそうやし行くだけ行ってみたら?あかんかったら帰っておいでよ。」

今朝もその言葉を思い出してしまい、キャンセル出来ずに来てしまった。


待ち合わせ場所の大きな駅は4フロアに跨っており、迷路みたいな構造をしている。

早めに着いてしまった。動悸がする。もう一つ薬を飲もうか。いや、昼から飲み過ぎも良くない。

なんて事を考えていると、5分前にゴリが来た。

「まだ時間前やのに早いなぁ。じゃあ、早速やけどいこか」


水族館はここから少し離れてるらしい。2人で電車に乗り込む。

前回はまだよかった。お酒があったから色々誤魔化せた。

今は2人きり、何を話す?何処を見たらいい?なんで好きでもない相手にここまで心揺れないといけない!

思考があちこちに飛び出した所で、声がかかる。

「お笑いすきなんやっけ?バナナマンの、、、」

話しかけられて少し落ち着く。そうか、いつも通りでいい。年も同じだし同僚に接するようでいい。


水族館は楽しかった。

昔からあるところらしいが、古臭さは感じられず雰囲気も悪くない。

イルカショーなんかはないらしいが、外に出なくていいのは悪くない。

ゴリは何故か魚に詳しかった。興味が出ることはとことん調べるたちらしい。

途中にはキャンドルライト作りなんかあり、2人で作ったのも楽しい。

帰り際には小さなぬいぐるみをプレゼントされたりした。


「魚見てたらお腹空いてきた」と私が言うと、「なら梅田あたりでご飯にしよか」とゴリがいう。

うまいこと誘われたなと思ったが、まぁいい。


水族館を出て食事することにした。

個室で静かな居酒屋に案内される。

どうやらちょっといい店らしい、メニューの単価は少しばかり高めだ。

ゴリは上手に私と距離を詰めてくる。悪い気もしない。

「明日も仕事やし、そろそろ帰ろか。」ゴリが言う。意外と紳士なのだろうか?

今日は出させてというゴリに礼をいい帰路につく。


心配はあったが、今日は楽しかった。

うん。楽しかった。

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そして私は、夢と溺れる。 @amethyst-purple

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