第3話「古澤このみ」
「その時、深田さんは古澤先輩の遺体を見つけて警察に通報した…というわけですね。」
「はい」
あの日の夜、市川は私の通報によって警察に逮捕された。
動機は私の思惑通り、古澤先輩の作品データを抜き取っているところを本人に見られたことで動揺して殺害したとのことだった。
数日後、私は『古澤このみ殺人事件』の参考人として暗く薄汚い取調室で聴取を受けていた。
「深田さん、休日に古澤さんと会おうとしていたようですが、それはなぜですか?」
「古澤さんは私が入社した頃から
『困ったことがあったらなんでも相談して』と、私に言ってくれていました。
この時、私は人間関係や社内コンペの件で悩まされていたので話を聞いてもらおうと思ってメールをしました。」
「メールをして…その翌日、この日になったということですね?」
「その通りです。
先輩は私の全てでした。
私は彼女しか信用していません。
それなのに……それなのに!!!」
怒りと悲しみが込み上げてきて、私はまた泣いた。
「分かりました。
ご協力ありがとうございました。
何度もあの日のことを聞いてしまって申し訳ありませんでした。
古澤さんは本当に後輩想いの優しい先輩だったんですね…」
「はい。」
優しい先輩だった…
だから私はあの日、古澤先輩に話したかったんだよ。
『先輩、私の作品データ…なんで盗んだの?』
目が合っちゃった 海音 @nukadukenokami
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