第8話 乗組員昇格!

 第2オホーツク丸(仮称)はちょっとした危機に陥っていた……


「ヤバい……」


「せっかく育てた若いモンが第14オホーツク丸(仮称)に取られた……」


「まだまだ足りないとこがあるけど、伸びしろがあるヤツだったのに……」


「金に目が眩みやがって!」


「ま、しゃーない。うちらの船、ベテランの俺らの歩金ぶきんを多くした分、アイツの歩金ぶきん微妙だったし……」


「第14はベテラン1人しかいないから、アイツの歩金ぶきん、多くなるだろうからな……」


 注)歩金ぶきんについて

 ホタテ漁は月給の他に歩金ぶきんと呼ばれるボーナスが毎月支給される。その月の漁獲量と売却額を元に基準額を定め、各人に割り当てられた人権にんけんと呼ばれる数字を掛けて算出する。各船に所属している乗組員の人権にんけんは船頭が決定するが、人権にんけんの合計値は組合が定めた値を超えることはできない。このため、ベテランが多い船の場合、若手が割りを食うことがある。


「それを言われると弱い……」


「アイツは気持ち良く送り出すとして……」


「問題は……」


「代わりのヤツを見つけなければ、来年、漁ができないってことなんだよな……」


 しばらくして……


「船頭の知り合いのおっさんが紹介してくれるって話だけど……」


「問題あるか?」


「このおっさんが紹介したヤツ、微妙なヤツばっかだったっしょ」


「休むは飛ぶ(辞めていなくなる)は散々だった……」


「それを言われるとキツい……」


「それじゃ、補助員から……って、有望なヤツは他の船が取った後だよ!」


「ここは妥協して残ったヤツを……」


「乗組員→補助員のパターンの人は仕事できるけど、前の船のクセがあるからなぁ」


「今乗ってんのは、ウチの船だって話なんだけどね」


「休むヤツ雰囲気悪くするヤツは論外……。となると……」


「万吉だな……」


「休まないし、指示は聞くし……」


「問題は……」


「まだまだ仕事が遅い……、漁師としてのスペック(筋肉)がまだまだ足りない……」


「そこは自覚持てば変わってくれるんじゃね?」


「そうだな。辞めるアイツも初めは酷かったからな……」


「よし、じゃあ声かけるか!」



 ◇◆◇

 後日、拙者、第2オホーツク丸に乗船


「万吉、ウチの船乗るか?」


 --第2から話が来るのは想定外でゴザル! 欠員が出た他の船は未経験の若者や新人で来たコーイチ殿を採用していたから、第2もそうかと思っていたでゴザル! 乗組員はプレッシャー半端ないでゴザル! しかし……、一度は乗らないとこれ以上伸びないでゴザル……! なら……


「よろしくお願いするでゴザル!」


「お〜よろしくな!」


「乗組員キツいけど頑張れ!」


「分からないことはしっかり教えるから、分からなかったらちゃんと聞けよ!」


「了解でゴザル!」


 という事で来年から第2オホーツク丸(仮称)に乗ることになったでゴザル!

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ホタテ戦記 ばんがいへん! 万吉8 @mankichi8

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