第7話 乗組員と補助員の違い

 オホーツク周辺のホタテ漁の仕組みとして補助員というものがあるでゴザル。


 ホタテ船には、船頭1人と乗組員4〜6名(街によって異なる。拙作の舞台となっているオホーツク町では4名)が乗るでゴザル。ホタテ船の操業は船頭1人+乗組員3名がいれば、最低限何とかなるでゴザルが、この最低限は『三人仕事』と呼ばれ、本当にキツいらしいでゴザル。


 また、乗組員は漁期の間、冠婚葬祭等で休まざるを得ないことや、病気・怪我で休むこと、あるいは飛ぶ(漁期終了前に辞める)こともあるでゴザル。


 こういった時に補充人員として派遣されるのが補助員でゴザル。このため、補助員を予備員と呼ぶ場合があるでゴザル。


 では、ホタテ各船に欠員がない場合は休むかというと、それは違うでゴザル。この場合は、ホタテ各船に乗組員の補助として派遣されるでゴザル。補助として何をするかについては、各船で変わるでゴザルが……


 ・出航前の段取り(準備)

 →ピンドルの引き上げ、八尺のセット、道具を所定の位置に置く


 ・出航

 →ハヤスケ等で岸壁を押す、ピンドルの引き上げ、岸壁と船を繋いでいるロープを外す


 ・八尺投下

 →ドンズを投げる、道具を所定の位置に置く、甲板・カイシングに水を流す


 ・巻き上げ

 →網を引っ張る、網やかぎ爪に引っかかったものをほろう、ダンブルのフタを開ける


 ・選別

 →甲板に上がったガサから正貝をダンブルへ、割貝・ヒトデ・ツブ・ナマコ・タコその他をカゴ等に入れる


 ・選別終了

 →割貝・ヒトデ・ツブ・ナマコ・タコその他をその船で決められている場所に集める、ダンブルの蓋を閉める、甲板・カイシングに水を流す


 ・帰港準備

 →ピンドルの準備、割貝・ヒトデを入れたカゴをカイシングに上げる


 ・帰港

 →ピンドル設置、割貝・ヒトデを入れたカゴを岸に上げる


 ・荷揚げ

 →ヒトデを入れたカゴを収集用の箱に入れる、割貝回収の手伝い、モッコをたたむ


 ・荷揚げ終了

 →ダンブルの中でモッコを敷いている乗組員にモッコを渡す、ダンブルを閉める、八尺を甲板に置く手伝い、八尺のかぎ爪のチェック


 こんなところでゴザル。ただ、仕事のメインはホタテの選別なので、他は大してできなくても、どうという事はなかったりするでゴザル。


 これに対して乗組員は、船の中の仕事全てができないとならないため、更に仕事量が増えるでゴザル。更にミスは事故につながるため、プレッシャーが半端ないでゴザル。


 そんな乗組員と補助員の待遇の違いは……


 ・乗組員の方が月給一万円高い

 ・歩金(収穫量に基づくボーナス。収穫量と卸値等を基に出された基準額に人権にんけんと言われる数値をかけた金額が支給される)の人権にんけんが補助員は0.7〜1.0に対して、乗組員は0.9〜1.25と乗組員の方が高い。

 ・年末にツブ・ナマコ・タコの売却金が支給されるが、補助員にはツブ・タコの売却金は支給されない


 というものがあるでゴザル。


 乗組員の方がお金を貰えるでゴザルが……。乗組員からは「補助員金もらいすぎ」という話や補助員側にも「補助員の方がコスパがいい」という話があるでゴザル。


 採用については、双方ともネット・紹介という感じでゴザルが、補助員はネット、乗組員は紹介がメインという印象でゴザル。

 なお、補助員から乗組員への昇格、体力的に厳しくなった乗組員が補助員になるパターンもあるでゴザル。


 昨年の処理水放水の頃にX上で『ホタテ漁は既得権益で新規参入はできない』と批判する言説が見られたでゴザルが、猿払村のような例外を除けば、割とあっさり参入できるでゴザル。


 斯様に批判する方々がホタテ漁をやっている町の漁業組合に抗議の電話でも入れようものなら、「来年の漁に参加しませんか?」と返すと思うでゴザル。それくらい人手の確保が大変なのがホタテ漁でゴザル(他も人員確保が大変という話も聞いているでゴザル……)。


 とは言え、ホタテ漁は漁業の中でもトップクラスにキツいという評価があるので、軽々しく勧めることはできないでゴザル。


 これからホタテ漁がどのようになっていくかは分からないでゴザルが、その辺りのことは今後も触れていく事になると思うので、興味があれば読んで欲しいでゴザル!

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