第9話 だから近場の怪奇名所にした

(音声スポット4)


「幕の内峠に来るのも久し振りだな」と僕は呟きつつ、自身のスマートフォンで撮影をおこなうのだが。


 僕は最初、この幕の内峠で、バスの転落事故死した人達を供養する慰霊碑やお地蔵さんを見詰め。


(まだ、ちゃんと供養塔とか、綺麗に残っているんだな)と思えば。家の女房は車で待たせ、僕は徒歩で峠を下っていく。


 すると僕の目の前を高齢者と言うか? 僕よりも少し年上かな? 年齢六十代ぐらいの男性とすれ違うから。僕は彼にペコリと頭を下げる。


 でも彼は無反応で上──。墓苑へと歩き向かっているから。


 僕は先ず(不愛想な人だな)と思う。


 でッ、次に(近所の人が散歩しているのだろう)と僕は思えば。


(昭和の時代ならば考えられないよな。徒歩でここを逆から一人で登ってくるなんて……。儂ならば怖くて一人で登ってこられないけれど)と思いつつ、苦笑いを浮かべながら道を下れば。


 そこは大変に気味悪い風景ではなく。


「あっ!」だよ。


 僕は「あれ?」と驚嘆を漏らしてしまう。


 だって僕が以前、幕の内峠に肝試しにきた時は、道路は荒れて凸凹……。峠のカーブも急で、道幅も狭い記憶があるのだが。


 昭和の時代よりも路面が綺麗にアスファルトで舗装をされて、以前のような畏怖を感じない状態へと移り変わっているから、僕はがっかり。自身の肩を落とすのだが。


 まあ、わざわざと幕の内峠へと来たのだから、動画撮影だけはしておこうと思いつつ。僕は慌てて動画を二、三カ所撮影……。


 そして終われば反転し、「あれ?」と僕はまた声を漏らしてしまう。


 だって先程僕とすれ違った男性の姿が無いから。僕は首を傾げつつ、慌てて車へと戻ると。


「お前、先程、ここ男の人通らん、かった?」と女房尋ねる。


「いいや、誰も通らん、かったけど。あんた。どうかしたん?」


 僕の問いかけに対して女房は、自身の首を傾げつつ首を振るから。


 僕は慌てて車をUターンして、自身の顔色を青く染めつつ、背中に冷たい物を走らせ、畏怖しながら家へと逃げ帰ると言った、不思議な体験をしたのだった。


 あの人……。あの男の人は何者だったのだろうか? と、思いつつね。


 ◇◇◇


(完)

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信じる、信じないは、あなたの自由……。広島市の怪奇名所、Y〇u Tubueの動画撮影中に起きた不思議な体験。「行けば、本当に出るかもよ~?」 かず斉入道 @kyukon

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