【KAC20247】バラ色の恋は突然に……

この美のこ

バラ色の恋は突然に……

―― えっ!今なんて?


 フラッシュモブ・プロポーズが大成功に終わった瞬間に潮先生と手を取り合って喜び合ったと思っていたら「離さないで」といきなり抱き寄せられての予期せぬ告白。

目と目が合った瞬間に胸の鼓動は高鳴り、奈々は緊張と興奮で手のひらが汗ばむ。

言葉にできない感情が渦巻き、一瞬の沈黙が永遠のように感じられる、それはまるで春の嵐のような突然のできごとだった。

奈々の心は揺れに揺れている。

感動の黄から驚きのオレンジ、さらには恥じらいのピンクから情熱のバラへと瞬く間に変化していった。

何か言わなければと思いながらも、言葉が見つからない。


 やがて周りの景が動き出し、仲間達が今プロポーズが大成功し、幸せの真っただ中にいる翔と蘭の周りに集まって口々に


「「「おめでとうございます!!」」」


と言っているのが聞こえてきた。


 取り残された潮先生と奈々に誰も気づいていないかのようだった。

だって、主役は翔と蘭なのだから。


「ごめん、突然すぎたね。でも俺の本心だから。」


潮先生が照れながらも、しっかりと奈々の目を見て言った。


 潮先生の事は、講師の先生として尊敬していた。

明るく躍動感に溢れる潮先生に教えてもらうダンスは楽しかった。

この教室に通うようになって、奈々は次第に明るく変わっていくのを感じていた。

潮先生に対して憧れや尊敬はあったけれど異性として意識をしたことはなかった。

けれど今奈々は心が弾みドキドキ感が止まらない。

奈々はやっとの思いで、こう答えた。


「あ、ありがとうございます。お、お友達からお願いします」


いつの間にか、やって来たダンス仲間達に囲まれた潮先生と奈々は


「「「ブラボー!」」」


と声援の中にいた。


 虹の照明が店内を照らし、そして『バラの恋は突然に』の曲が店内に流れ始め、仲間達がダンスを踊り始めた。

潮先生が奈々の手を取って、踊りに加わった。

レストランのオーナーは潮の友人。

潮の幸せに拍手を送っていた。




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