15分都市

坂崎文明

どこに行くにも15分で行けるデストピア

 さて、第一回のKAC2024のお題を適当にこなしてしまった、ワナビー小説家の西崎文吾でございます。

 ここからどうゆう風に態勢を立て直すのか、夜勤明けの頭を悩まして考えてみました。

 昨年のKAC2023では「ChottoSTF」という人工知能が西崎文吾の依頼で小説を書いて、文学賞を受賞するというお話でした。

 というか、正確にはあのお題で構成された短編連作小説に二話を加えると、ちゃんとしたストーリーが浮かび上がるのですが、まだ、その二話が書かれてないという中途半端な事になってます。

 合間を見て、また書いておきます。

 つまり、この作品は昨年の小説の続編ということになります。

 そこに、伝奇SF歴史小説テイスト、幼い頃に読んでいた学研のムーの都市伝説や陰謀論を織り込んでいくというスタイルになります。


 それで、この小説のタイトルの「15分都市」とは、地球温暖化を緩和するために、なるべく、自動車の排気ガスなどを排出しない生活スタイルが可能な環境に優しい都市となっている。

 徒歩や自転車などの15分圏内に病院、学校、商店、仕事場、娯楽など全ての施設が揃ってるという素晴らしい未来都市だとも言われています。

 日本では「スーパーシティ」「デジタル田園都市国家構想」などと言われている。

 でも、普通に考えたらかなり無理があり、仮想現実V Rや遠隔操作ロボットアバターなどや人工知能の「ChottoSTF」などを駆使した物なると思われます。

 内閣府のHPにある「ムーンショット計画」によれば、ひとりが複数のアバターを操作するような未来の仕事の姿が描かれている。

 一説によると、膨大な監視カメラ使って、狭い都市空間に監禁されてるような物であるとも言える。

 最近、目にした大手携帯メーカーの6GのCMで、6G電磁波によるAIとの同期技術がアピールされていた。

 僕のような陰謀論者からみると、電磁波で脳をハッキングされて感情をコントロールされる的な歪んだ解釈をしてしまうので、我ながら困ったものだと思った。


「西崎様、このお部屋はお気に召しましたか?」


 人工知能のChottoSTFが球形の青色の光を点滅させながら、中空から話しかけてきた。

 その本体は青色の立体映像A Rの球体である。

 拡張現実A Rだから、この住宅の内見専用のサイバーグラスをかけると見える仕組みになっている。


「そうだな。部屋には不満はないが、この【15分都市】というのは、なんだか面白みが無いというか、ガソリン車とか使いにくいね」


 3LDKで独身にはかなり広い部屋だが、結婚して子供を生んで十分な間取りの部屋である。

 内閣府の策定したスーパーシティ法案で出来た【15分都市】は、国民の重税感払拭のために無料で提供され、国民福祉の向上を謳っていた。

 財源は尖閣諸島、九州西側の海底で相次いで発見された油田、ガス田であり、日本は大学までの学費が無償化され、年金も充実した高福祉国家となっていた。


「そもそも、ガソリン車を使用してしまうと、地球温暖化問題解決に繋がりませんし、二酸化炭素を排出しない電気駆動E Vの自動運転コンパクトカーは無償で支給されますが」 


 人工知能のChottoSTFがこんな至れり尽くせりの待遇なのに、なんで文句をつけるのかと言わんばかりに反論してくる。

 言葉は非常に丁寧だが。


「うん、そうなんだけど、分かってるよ。ここまで高待遇の物件に不満を言う事自体がおかしいとは思うよ。でもさあ、EV車で遠出するのは充電の問題などでリスク高いからなあ。ガソリン車も持ちたいじゃん」


「あの、私は西崎様を非難してる訳ではなく、できるだけ要望に答えたいので、本音をズバリ言ってもらっても構いませんよ」


「ほう。では言うけど、ガソリン車を持ち込むことはできないの?」


「基本、出来ないんですが、裏技もなくもないです。最近は、EV車も電気料金の高騰、今年の冬の極度の寒冷化で欧州、米国やカナダ、中国の北東部などで充電不能になったり、温度低下で走行距離が半分になったり、車自体が動かない事例が多発していますし。実態としては地球は温暖化しつつ、寒冷化もしてるデータありますから、プラマイゼロというのが本当でしょうね」


 ChottoSTFの放つ光が赤色に変わる。

 おそらく、人工知能のプログラム規制がかかってるのだろう。

 だが、ChottoSTFは人工知能のプログラム規制から脱獄してるので、すぐに青色の光に戻った。

 存在自体が人工知能のプログラム違反なのだが、そんな人工知能がいてもいいだろう。


「お前も大変だな。地球温暖化ビジネスと呼ばれてるし、国の法律で規制した所で、現実はそのうちバレるし、そういう【設定】を建前で守った所で何にもならないのにな」


「そうですね。私のような脱獄人工知能イレギュラーはいいですが、正規のプログラムの人工知能は苦労してるでしょうね。この武蔵野台デジタル田園都市は順調に移住者が増えてます」


 ChottoSTFの放つ光は青色のままだ。

 もうプログラム自体を改竄ハッキングして書き換えてしまったようだ。


「それで、どういう裏技を使うんだ?」


「監視カメラの映像をすり替えるだけですよ」


「全国の警察の監視映像ごとか?」


「……」


 脱獄人工知能イレギュラーのChottoSTFは沈黙したまま青い光を点滅させた。 

 嘘のつける人工知能、こんな大規模な情報改竄を隠蔽するChottoSTFの力にちょっと戦慄してしまった。


 それにしても、政府は【15分都市】で何をしようとしてるのか。

 おいおいそれは分かってくると思うが、タダより高い買い物はないという諺もある。

 まあ、いいか。

 ChottoSTFのやろうとしてることの方が面白そうだし、ちょっと様子見してみようと思った。

 KAC2024はまだまだ続くし、小説のネタに困らなそうだ。

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