休日にて 2

 その後、特になにか意味のある会話は無く、二人は店を出る。


「じゃあ」

「先輩の家に今からお邪魔してもいいんですか?」

「なんでそうなる?」

「だって行ったこと無いんですもん」


 口を尖らせる夏美なつみだが、あやはそんなこと知ったことかと手を振る。


 彩と夏美は、同じ中学出身だが、家の場所は正反対だ。そのため、互いの家の外観すら知らない。


「嫌。あたし家に誰も呼びたくない派の人間だから」

「ケチですね」

「嫌なもんは嫌だから」


 見られて困る物があるのだ。例え夏美であっても、いや、夏美だからこそ見られるのが嫌なのだ。


 だからといって、夏美個人が嫌という伝わり方をしては一大事のため、誰も家に呼びたくないと言ったのだ。


「じゃ、あたし帰るから。夏美も気をつけて帰りなよ」


 これ以上夏美に余計なことを言わないように、早く帰ろうとする彩だが――。


「途中まで一緒に帰りましょうよ!」


 歩く彩の隣に並んでくる。


「はあ、勝手にすれば」


 と言いつつも、心の中では笑顔の彩であった。

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百合の一幕 彩と夏美の変えられない日常 坂餅 @sayosvk

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