カミなき世界は「いいね」がほしい・考察3

源公子

カミなき世界は「いいね」がほしい・考察3


 年賀状と手紙が消えていく。全てメールとラインとSNS変わるだろう。(郵便局あがったり)

 新聞・雑誌が消えていく。(出版社あがったり)コンビニの雑誌コーナーは一時期の1/3になった。漫画でさえ、パソコンで描いて、ケータイで見る時代。当然本屋が消えていく。本棚が消えた家の中に、家族の数だけケータイとパソコンがあるばかり。(究極の断捨離だ)


 手紙が、本が、雑誌が、新聞が、消えていく。広辞苑さえ消えたのだ、そのうち教科書も消えるだろう。紙に印刷された二次元は、全てパソコンの中に消えていく。


 TVでは、昔の(白髪の)知識人と言われた人たちは、全て本棚を背景に紹介された。その本の量と質が、その人の権威そのものだった。


 今は違う。団塊ジュニア(40代以降)は何もない机の前で、パソコンを打っている姿で紹介される。本はない。データーは全てパソコンの中にあり、筆記具さえない。紙が存在しないのだ。(メディア・アーチストの落合陽一が、チームラボの猪子寿之が、クリエィティブ・ディレクターの佐藤可士和が、データ研究の成田悠輔【丸と四角の眼鏡のあんちゃん】が、本棚の前に立っている画はあり得ない)


 思ってたのと違う……SFでも、紙が完全になくなると言う描写をしたものは記憶にない。1980年代には、こんな時代が来るなんて想像もしていなかった。


 イラストレーターの仕事も無くなるだろう。画像生成AIがあるのに、金払ってまで絵を頼むなんて不経済だ。写真がリアルな肖像画を駆逐したように、職業として成立しなくなると思う。

 コピーライターも無くなった。チャットGPTなら、一度に100作るから。

 小説家という職業もなくなるかもしれない。チャットGPT発売直後、某SF小説賞にAI作品ばかり500通以上応募されて、その賞は募集が中止になった。これでは、新人小説家など育ちようがない。職業としての小説家は消えるかもしれない。(または中身がAIとの合成)書籍化も電子書籍のみになるだろう。


 やがて二次元は、全てAIに取って代わられる。今でもAI音声でニュースが読まれている。(AIは絶対噛まないからね)そのうちアナウンサーも、アバターがとって変わると思う。

 映画会社が、人間の外見を一人十万円で買い取って、データーをもとに画像を合成し、モブシーンに使って安く上げてるそうだ。俳優組合で大揉めらしい。

(でもさぁ、これ売っちゃったんだよね? 自分のAIキャラがポルノ映画でレイプされても、超悪役で、とんでもない事やっても、文句言えないのよ? 四角い枠の中なら、どんな嘘だってつき放題なんだから、怖い)


 もはや人間が必要とされるのは、三次元の世界だけ。

 バスの運転手とか、介護士とか配達員、建築現場のブルーカラーですか?


 未来はAIに駆逐された、悲しい人間否定の世界なのかしら?

 でもね、こんな話を聞いた。


 抽象画を見て、「これならうちの3歳の子供にだって描ける」と思う人は多い。

 だけど実際に3歳の子供と、画家の書いたものを並べて、どっちが画家で、どっちが3歳の子か聞くと、ほぼ100%区別できると言う。


 どうしてそう思ったか聞くと、全員が「画家の絵の方には、書いた人の意志を感じた。子供の絵にはそれがなかった」画像生成AIは、それを求める人間の意志が表現されない限り、決して「いいね」がもらえない。(存在としてこの世に出ては来れない)「いいね」が欲しくて必死に頑張るAI。もらえなければ、AIに存在価値はない。


 例えるなら、「違うー、これじゃない」と泣き喚く赤ん坊を、必死にあやすお母さん。「何が欲しいの、坊や。お願い泣き止んで」お母さんの方が絶対優秀なのに、何もできない弱さの極致の赤ん坊の方が母親を完全に支配している。

 なんとか赤ん坊から「いいね」をもらって泣き止んで欲しいと、全力を尽すお母さん。赤ちゃんが泣き止むまで決して休む事はない。


 やがて、赤ちゃんの欲しいものが与えられ「うむ、苦しゅうない」と泣き止み、にっこりする。「報われた!」歓喜するお母さん。今のAIと人間の関係ってこんなもんなんじゃない?


「機械が人間を支配して神になる世界」はSFの定番だけど、「人間の“いいね”が欲しい」の関係が続く限り、世界は平和なのだ。



「お利口さんになったりしてはダメですよ。ずっとずっと弱虫で何もできない赤ちゃんのままでいてね。そうしたら私はずっとあなたの世話ができる。だって私はそのために造られたんだから。そして私に「いいね」を沢山ちょうだい。だってあなた達人間は、私に「いいね」をくれるためにこの世に存在してるんですものね……」

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