【KAC20241 参加作品】〇〇は三分以内にやらなければならないことがあった。 ーcase by TOHO KYOEI Hi Schoolー

あらフォウかもんべいべ@IRIAM配信者

第1話







  〇〇には三分以内にやらなければならないことがあった。


 ここは東方共栄学園の通学路から外れた公園。


 この公園には多目的トイレが設置されており、バリアフリー的な機能で地域住民の助けになるはずだったのだが……どうも本来の用途とは違った使い方をする、不届き者たちがいる。


 多目的だけに本来の趣旨に反し、悪用する不届き者を監視する人物たちがいた。


「ナギ姐、あそこの多目的トイレに入ったカップルってさ、どう考えてもあれだよな?」


「ああ、どう考えてもよろしくやってることだろうよ。耳を澄ませてみな?」


「……ああ、早いな。もう終わっている。今頃粋がってシケモクでも吹かしているんじゃないか?」


「「HAHAHA!」」


 放課後、学校周辺の見回り、防犯と生徒指導を兼ねた活動をしている二人の紹介をしよう。


 ナギ姐こと、香坂 凪沙(コウサカ ナギサ)は、東方共栄学園の英語講師であり、ハリウッドセレブもびっくりな191cmの長身を誇り、お胸にチョモランマを二つも備えたグラマラスな超絶美人として人気な一方、とてもおっかないと評判である。


 東方共栄学園の卒業生でもあり、その当時から有名な場所、生徒たちが本来からかけ離れた、不適切な利用をするスポットについて網羅している。


 とてもおっかないとも評判のナギに協力する生徒の一人、まるでチャイニーズマフィアのような風貌は、香港ノワールの作品から飛び出してきた登場人物のようである。


 そんな彼の名は、春日 虎千代(カスガ トラチヨ)と言い、生徒の噂、周辺の情報については網羅しており、おまけとばかりに諸事情で四回もダブっているための事情通でもある。


 なんとかこれ以上ダブらず、無事に卒業をするための条件として、ナギの活動に協力している訳であるが、活動そのものに対してはまんざらでもない様子である。


 二人が目を付けたのは、東方共栄学園の生徒二人。


 カップルであることは明らかであるものの、そういう年頃の男女がなにもしないはずもなく、かといって高校生カップルの金銭事情、風営法や青少年法やら条例から考えて……あれをするとなれば、本来の目的から外れた、多目的トイレの利用も選択肢の一つに入るのであろう。


 しかし、このカップルにとって誤算だったのは、ナギとカスガに跡を付けられたこと。


 それだけでなく、この多目的トイレにも罠が仕掛けられていることを、二人だけの時間をお楽しみなカップルたちには、まるで知る由もなかった。


「カスガ、オージーの公衆トイレについては知ってるよな?」


「ああ、不適切な利用をする奴らがいるから、15分経ったら自動でドアが開くって話だろ?」


「そうだ、あのカップルたち、ここの多目的トイレがそうだと知らずにさ、サクッとヤりたくて入ったのかもな」


「ああ、あまりにも早くてびっくりだよ」


「こんなところに来ないでさ、他でもっとゆっくり楽しめよな」


「「HAHAHA!」」


 そう、【あるカップルには三分以内にやらなければならないことがあった】。


 それは、お楽しみのあと、監視の目を光らせるナギ、カスガの二人からどうやって逃れるのか?


 15分経てば自動で開く扉は、既に三分を切っており、間もなくタイムリミットを向かえようとしていた。


 しかし、カップルたちの受難はそれだけではない。


「それでカスガ、お前がカザミをけしかけたらさ、快く協力をしてくれたよな」


「ああ、あいつは正義感が強いと言うか、好奇心と混在していると言うか……ともあれ、あのカップルが入る様子を気付かれることなく撮影済み。ご丁寧にICレコーダーを使って外から録音してくれている……だが、あいつにはちょっと刺激が強すぎるんじゃないか?」


「ああ、きっと夜も眠れないのかもな」


「「HAHAHA!」」


 そう、多目的トイレに入ったカップルを監視していたのは、ナギとカスガだけではなかった。


 カザミこと、風見 日向子(カザミ ヒナコ)。


 彼女は中学時代に同級生の悪行を記録し、そのうち特に目に余る、あるいは気に入らない同級生多数の進路を辞退させた過去がある。


 カスガの言うとおり、正義感と好奇心の混在から今回の活動に協力し、スパイ映画さながらの活躍を見せているのだ。


 問題は、このあとどのようにして取り締まるのか、ナギとカスガは少し悩んだものの、もう残された時間は僅かであった。


 その時、カスガの携帯端末が震え、手に取った彼は、送り主からもたらされた情報を確認し、ため息を一つついた。


「カザミからだ。ナギ姐、黒」


「よし、そろそろいくか」


 まもなく多目的トイレのドアが開くであろう、カップルが入ってから数えて15分に差し掛かろうとしていた時だ。


 カスガは、刺激的な15分の様子を聞いてしまった、カザミをどうフォローしようか頭を抱えつつ、カップルの確保をナギ姐に丸投げしようと考えながら歩みを進めた。


 ナギは、カスガにヒナコのフォローを一任しつつ、自身でカップルを確保したあと、残地物の確認、場合によっては女子生徒を産婦人科へ連れていかなければならないと考え、頭を抱えながら歩みを進めた。


 一方、現場の多目的トイレ前に立ったカザミヒナコは、扉が開く直前、猛烈な勢いで扉を蹴り始めた。


「ごるあああ!! てめぇらさっきから楽しそうだな!? 早く出てこいやボケ!!」


 カザミヒナコは突如として暴走し、慌てたカスガとナギは全速力で急行するが……【彼らは三分以内にやらなければならないことがあった】。


 それは、この三人の監視の目から逃れるため、目をつけられたその時から、全速力でその場を立ち去らなければいけなかったのだが、もうそれは叶いそうにないのであった。


 もう一つ、ミニマムで凶暴な風見 日向子を三分以内、むしろ今すぐに止めなければならなくなった───。








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