魔法少女ラーメンタイマー
十余一
第14話 好き嫌いはダメ!? ピーマンクライシス!
あたしには三分以内にやらなければならないことがあった。
平和を脅かす怪人を速効で退治することである!
「そこまでだ!」
善良な市民といたいけな子どもたちを追いかけまわしていた怪人は、あたしの声に反応して足を止める。そして鮮やかな緑が振り向いた。両手にはピーマン、頭もピーマン。
ピーマン頭の怪人は、その見た目の通り人々に無理やりピーマンを食べさせていたようだ。好き嫌いはよくないし野菜は一日三五〇グラム食べることが推奨されてるけど、手段を選べ。手段を。
言葉で説得する気もないので、変身して
「ミラクル・ヌードル・チェンジング!」
カップラーメンを変身パクトのように開いて熱湯を注ぎ、魔法のヌードルストッパーで閉じた。あたしは一旦光るワンピースに身を包み、それから軽快な音とともに服装が変わってゆく。ラーメンのどんぶりを模ったスカート、麺のリボン、ナルトの髪飾り。最後にお決まりのセリフとポーズ。
「香りたつ伝統と勇気! ピュアソイソース!」
決まった。別に決めたくもないものがビシッと決まった。
あたしと怪人の間に沈黙が訪れる。
ややあって、怪人が少し言いづらそうに口を開いた。
「その格好と口上、恥ずかしくないのか……?」
「見たヤツを消せば恥も何も残らねンだよ」
「正義の味方にあるまじき発言だぞ!」
「とっとと浄化技いくぞオラァッ!」
「尺の都合か!? もっと情緒というものを……」
「ねぇよ、そんなもん」
「仲間と力を合わせてとかは!?」
「ピュアソルトは法事、ピュアミソは受験で忙しいんだよ。もういいから、あたしのソロ技くらっとけ」
それでもまだ怪人はごちゃごちゃと何か言ってるけど知ったこっちゃねえ。あたしだって昼休みに抜けてきてんだ。必殺の浄化技いくぞ!
「コール! ピュアピュア・バリカタヤサイマシマシカラメチョモランマー!」
「アッー! ヤミーヤミーハッピ~……」
怪人を倒した清々しい空気のなか、あたしは伸びずに済んだカップラーメンをいただく。食べすぎて食傷気味の醤油味だ。
平穏を取り戻した街で人々は日常を送る。道行く人はあたしに手を振り、あるいは微笑ましく見守り。子どもたちはキラキラした目を向けてくる。この笑顔を守れてよかったという気持ちと「見世物じゃねンだよ、散れ散れ」という気分がだいたい半々くらいだ。
誰が呼んだか魔法少女ラーメンタイマー。この街のちょっとした危機を救うため、あたしの活動はまだまだ続く。
魔法少女ラーメンタイマー 十余一 @0hm1t0y01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。