KAC20241 それは詐欺だよ。――嘘をつくなぁ。

久遠 れんり

詐欺なのに……

 俺には三分以内にやらなければならないことがあった。

 おれは、友人を一瞥しカウンターに向かった。

 権利を確定してもらうため、費用として電子マネーの購入して、番号を入力しなければ。


「おい、急いでどうしたんだ?」

「ああ、お前か。今ちょっと急いでいるんだ」

 珍しい態度に、いやな予感がする。


「どうしたんだ? それに、そんなにあわてて」

「いや」

 そう言って振り切り、コンビニ内へ入ろうとする。

「おい、ちょっと待てよ」

「なんだ、しつこいぞ」

 そういう彼の肩を持ち、こちらに向ける。


 面と向かい、少し強めに彼に対して警告する。

「どこかに振り込むとかじゃないだろうな? 遺産の権利がどうとかって、何時までに振り込んでくださいとかっていうのは、大体詐欺だぞ」

「そんなんじゃ無いよ」

 だが、彼はニヤニヤが浮かんでいる。


「じゃあ、なんだよ」

「いや別に」

 そう言う彼の右手には、スマホが握られている。


「見せろ」

「やだよ。とにかく時間が無いんだ。四時までに……」

 そう言いかけて、彼は自身の口を塞ぐ。


「なんだ?」

「誰にも言うなよ」

 そう言って彼は、スマホの画面を見せてくる。

『おめでとうございます。十億円に当選しました。つきましては、事務手数料として……』


「見事な詐欺メールじゃないか?」

 だが、彼は形相を変える。


「何処がだ。電子マネーを購入して、番号を言うだけだ」

 そんな感じで、聞き入れない。

「最近そういうのが多いんだよ。口座だと潰されるから」


 だが彼は、表情を硬くして、ぷるぷると顔を震わせる。

「俺が幸運だからって、権利取得のジャマをするのか? 友人だと思っていたのに残念だよ。どけよ」

 彼は、俺を突き飛ばしてくる。


「おい、駄目だって、それは詐欺で……」

 今度は、思い切り突き飛ばされた。

 そこで意識が途切れた。


 俺が起き上がると、彼は無事に手続きを行った様だ。

「金持ちだぁ」

 そう言って、どこかへ行った。


 数日後。彼は警察を頼ることになる。

「お願いです。金を取り返してください」

 そう言って。


 彼とはその後、会っていない。

 友人だと思っていたのに残念だよ。彼が言っていた言葉は、俺も同じだったのに、欲で人は変わる。

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KAC20241 それは詐欺だよ。――嘘をつくなぁ。 久遠 れんり @recmiya

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