楽しみは人それぞれ 

@mia

第1話

 料理人が夕食の声をかける時先生はいつも同じ映像を見ている。全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れを。


「いつも見てますけど楽しいですか」

「楽しいよ。幼い頃見たバッファローの群れの迫力に衝撃を受けたよ。でもこんな草原ではなく街に群れがいたら楽しいと思わないかい」

「楽しくないですよ。こんなのいたら怖いです」

「そうかい? じゃあバッファロービルだったらどうだ?」

「バッファロービルってなんですか?」

「バッファロービルはある映画に出てきた裁縫と子犬が好きな男だよ」

「男が集団でいたら怖いと思いますよ。夕食はどうしますか。こちらにお持ちしますか、食堂にしますか」

「食堂に行くよ」


 先生はそう言って映像を切る。


 先生は医師免許も教員免許も持っている。他にも資格を持っているようだ。

 カウンセラーをしており街中にメンタルクリニックを開いている。結構患者さんがいるらしいのに週二回しかやっていない。

 教師といっても学校で働いたことはないそうだ。

 ボランティアがやっている学校に行けない子たちのための勉強会で教えているらしい。でも先生によると勉強を教えるよりも悩み相談を受ける方が多いようだ。

 先生は親身なので人気があり色々な勉強会に呼ばれている。中には月一回でもいいから来て欲しいというところもあるみたいだ。

 患者や勉強会の関係者や教え子などで先生を慕った人が弟子と称してこの家に住み込んだり通ったりしている。

 先生はそのために料理人を雇い毎日大量の料理を用意させている。

 弟子の中には弟子ではないのに料理人が住み込みで働いているのを気に入らない人もいて、嫌がらせをする人がいた。そんな人も先生と話し合うと謝罪し以後は手を出さない。

 そういうのを見ると料理人は先生が色々なところで人気があることが分かるような気がした。

 先生の目的は心にバッファロービルの欠片を仕込んだ人の群れを放つことだ。

 それらが人を破壊していくの楽しみにしている。

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