三割二分六厘
作家:岩永桂
三割二分六厘
ジェイコブは三分以内にやらなければならないことがあった。
彼の打率三割二分六厘、現在リーグ2位
首位打者の打率は三割五分一厘。
これから毎試合安打を二本以上放つ。
最終試合までに条件が揃えば晴れてタイトルホルダー。
暫定王者のミヤモトが相手投手なら、燃えない理由はない。
ジャパニーズベースボーラー、本場の実力を教えてやるよ。
第一打席 投手:ミヤモトVSジェイコブ:打者
第一球:ズバンッ! ストライク!
微妙なコントロールを予想してボールの下部をスイング!
な、ド真ん中だと?
俺様が打ち損じるとでも思ってるのか?
次こそは変化球だ。お前はストレートを投げれない!
第二球:ズバンッ! ストライクツー!
スプリットのような変化を意識して真っ直ぐに振らない。
っざけやがって! 二球連続でド真ん中ストレート。
......クソッ、単純な心理戦に
翻弄されちまってる。
絶対、ド真ん中ストレート! 来いや!
三球目:カキーン! ヒットゾーンに打球が落ちる。
(アイツ……笑ってるのか?)
一塁ベースに達してミヤモトを凝視。
次の打席も甘々な攻め? 奴の打席で決めるつもり?
解説者
「ジェイコブ選手、意地の一打が出ましたねえ」
アナウンサー
「ミカエルズのキャッチャーミットが
微動だにしなかった理由は何かあるのでしょうか?」
解説者
「データによるジェイコブ対策だったのでは?
あえてド真ん中に投げたとでも?」
アナウンサー
「しっかり解説して下さいよ!
僕の方が、専門知識に乏しいのですよ?」
解説者
「失礼しました。
ミヤモトの打席に注目しましょう。
一安打で突き放すのか? 策士策に溺れるのか?」
ミヤモトの次の打席は慎重に攻めた上での四球だった。
ジェイコブは次も出塁出来るのか?
第二打席 投手:ミヤモトVSジェイコブ:打者
一球目:来る! ど真ん中ストレート一択だ!
……カキーン!
打球が放物線を描く。
スタンドインの前にセンターがキャッチ!
二人の戦いは続く。ミヤモトはタイトルを獲れるのか?
三割二分六厘 作家:岩永桂 @iek2145
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