【短編】ChaBOT【AI】

シナリオセンターで書いているオリジナル脚本

原稿用紙10枚分:約10~15分の短編 or 作品冒頭 or 作品の一部シーンの切り出しのような形


脚本の読み方は特殊なので、こちらを一読して頂けると幸いです。

https://kakuyomu.jp/users/animaarca777/news/16818023214175603705


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 執筆日:2023年4月22日


【登場人物】

真島伽奈(25)(27)ライター

背野信司(40)(42)小説家

MC(45)ラジオのMCの男性

ゲスト(60)ラジオのゲストの男性

サイン会スタッフ

列に並ぶ男

テレビの司会者

音声A

音声B


【あらすじ】

真島伽奈は脚本家を目指し、自身のオリジナルストーリーを脚本サイトにアップした。その後、大ヒットした小説の内容がその脚本に酷似していた事に疑念を抱く。


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ChaBOT

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○背野の自宅(夜)


   電灯は薄暗い部屋で、パソコンモニターに向かう背野信司(40)の背中。背野はラジオを聴きながらパソコンに向かってひたすら文字を打ち込んでいる。


   ラジオからMC(45)とゲスト(60)の声が聴こえる。


MC「先生は最近流行りのChaBOT、使ってますか?」


ゲスト「あ~、AIだよねぇ……私はあーゆーのは信用できないんだよねぇ……」


MC「あら~、使ってないんですかぁ」


ゲスト「いや実はちょろっとね……使ってはいるんだけど」


MC「使ってるんかい~」


   ラジオの中で笑い声が起きる。


   パソコンのモニターの光が背野の顔を照らし、背野の左口角が斜めに上がる。


   


○伽奈の自宅(夜)


   明るい部屋で座椅子に座った真島伽奈(25)がこたつの上に置いたノートパソコンを凝視しながらキーボードを打ち込んでいる。テレビは点いていてバラエティ番組が放送されているが、伽奈は過集中状態でシナリオを書いている。タンッと小気味良くエンターキーを押し、背伸びをする。


伽奈「あ~!終わったぁ!完成したぁ~」


   数秒間、天井を向いて目を見開き、おもむろに前を向き煎餅にかじりつく。


伽奈「それじゃあ、アップロード……と、その前にChaBOT君に誤字チェックでもして貰おうかなっと」


 


○伽奈のノートパソコンの画面


   伽奈はChaBOTというページを開き「このシナリオの誤字・誤変換チェックをして下さい」と入力し、書き上げたシナリオをペーストして送信ボタンを押す。


   AIからは「この文章に誤字・誤変換はありません」と返答が来る。


 


○伽奈の自宅(夜)


   伽奈は目を見開きながら頷き、


伽奈「よっし、問題なし……アップロードっと……」


 


○伽奈のノートパソコンの画面


   伽奈は『脚本家になろうぜ!』というサイトに書き上げたシナリオをペーストし、送信ボタンをクリックする。


   


○伽奈の自宅(夜)


   伽奈は再び背伸びをして、満足そうな笑顔を見せる。


伽奈「たくさん読まれるといいなぁ~」


   伽奈の目はキラキラと輝いて見える。


 


○都内大型書店


   T「二年後」


   「小説【咆哮】20万部突破記念 背野信司サイン会」と看板が出ている。


   多くの客が並び、行列が出来ている。


   スタッフの男性が誘導している。


スタッフ「背野先生のサイン会はこちらでーす!」


   そこに伽奈(27)が誘導され、列に並ぶ。伽奈は不安そうな顔をしている。


 


○同・サイン会場


   背野(42)が次々と客にサインをしている。短い時間、会話をして、スタッフが列に並ぶ人々を誘導して回していく。伽奈も並んでいる。伽奈の目つきは徐々に険しくなっていく。


   伽奈の番が回ってくる。


伽奈「あ、あの!」


スタッフ「お客様、サインして戴く本を出して下さい」


伽奈「あっ」


   伽奈はゴソゴソとバッグを漁る。


   後ろに並ぶ客が訝しげな顔をする。


   伽奈は本と同時に『脚本家になろうぜ!』に投稿した自身の作品のプリントを見せる。タイトルには『咆哮』と書かれている。背野は眉間に皺をよせ、驚いた顔をする。


伽奈「あ、あの!先生はこの作品を読まれた事はありますか⁉」


   怒気を含んで伽奈が言う。


   スタッフが寄ってきて、


スタッフ「お客様、ここはサイン会場ですので、そういった事は……」


伽奈「さ、触らないで下さい!」


   伽奈はスタッフをキッと睨みつける。


   後ろに並ぶ男が文句を言う。


並ぶ男「おいおい、早くしてくれよ~!」


   「なんだなんだ?」と列に並ぶ人々がざわつく。スタッフはその客に謝罪するような素振りをして、手を挙げて女性スタッフを呼ぶ。


スタッフ「お客様!お時間ですので、お帰り下さい!」


   女性スタッフと男性スタッフ二人がかりで伽奈を力づくで連れていく。


   伽奈は振り向いて、


伽奈「背野先生‼私の脚本パクったでしょ⁉」


スタッフ「お客様!」


   スタッフは驚いた顔をしつつ伽奈を力づくで会場外に押し出していく。


   残された背野は椅子に深々と腰を掛けて、胸を抑えてふぅ~っと息をつく。


   戻ってきたスタッフが声をかける。


スタッフ「先生、大丈夫ですか?」


背野「いやぁ……、たまにいるんだよなぁ。あーゆーの……」


   片眉を上げ、掌を上に向け、背野は余裕があるような素振りを見せる。


○伽奈の自宅(夜)


   テレビで背野がインタビューを受けている番組を伽奈が睨みつけるように視聴している。


 


○テレビ番組の映像


   司会者が背野に質問をする。


司会者「先生の小説はいつも思いがけない展開がありますが、どうしてそんなに色々なアイデアが湧いてくるのでしょう?」


背野「実はねぇ、最近はChaBOT使ってるんですよ」


   司会者は目を丸くして驚く。


司会者「えっ⁉えぇ~っ⁉そのような事を話してしまって、大丈夫ですか⁉」


背野「良いの良いの。今更でしょう?今時使ってない人なんていないよ?」


   司会者は明らかに動揺する。


司会者「し、しかし、最近アメリカではAIによる映画の脚本製作で、盗作問題が起きた事が話題になっていますが……」


背野「あの使い方は下手だよねぇ。僕はちゃんとそういうのチェックしてるし、ちょっとアイデアの参考にしてるだけだからね」


   司会者は汗を拭う素振りを見せ、


司会者「いやぁ……まさかの、衝撃の発言が出ました……」


背野「具体的にどうやって使ってるか、今度お見せしますよ」


   背野はニヤリと笑う。


 


○伽奈の自宅(夜)


   伽奈が眉間に皺を寄せ、不満そうな顔をしている。


伽奈「ChaBOT……まさか……そんなの言い訳だ……」


    ×    ×    ×


   (フラッシュ)伽奈がChaBOTにシナリオをペーストする。


 


○背野の自宅(夜)


   背野が険しい顔で睨みつけるようにパソコンモニターで動画を見ている。


 


○背野のパソコンモニターの画面


   「小説・咆哮にパクリ疑惑⁉」というタイトルの動画が流れている。イラストのキャラクターが左右に配置されて会話形式で動画が進行する。


音声A「ねぇねぇ。昔、『脚本家になろうぜ!』に『咆哮』ってタイトルの作品アップされてたの知ってる?」


音声B「同じタイトルじゃん!小説の咆哮はパクリ……ってコト⁉」


 


○(回想)伽奈の自宅(夜)


   伽奈がノートパソコンでChaBOTに質問を書き込んでいる。


 


○(回想)伽奈のノートパソコンの画面


   伽奈がChaBOTに書き込む。


   「あなたの学習内容には、世界中の脚本のアイデアが含まれていますか?」


   ChaBOTからの返答。


   「はい、私が学習したアイデアは、多数の書籍、ウェブサイト、映画、テレビ番組、脚本家、小説家などからの情報が含まれています。」


   伽奈がChaBOTに質問する。


   「面白い脚本のアイデアをいくつか出してみて下さい」


 


○背野の自宅(夜)


 


○背野のパソコンモニターの画面


   動画でキャラクターの会話が続く。


音声A「だと思うだろ?いや、実はさぁ、そもそもこの、『脚本家になろうぜ!』の『咆哮』自体にパクリ疑惑があるんだよ」


音声B「えっ⁉本末転倒じゃん!」

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【オリジナル脚本】現代劇/ヒューマンドラマ【短編】 鳥宮 悠羽佑 @animaarca777

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