エピローグ2
豪華客船『アチャラナータ号』は目的地であるインドネシア諸島の港に着く。
世界一揺れない船――が謳い文句の最新鋭船舶の処女航海は波乱の幕開けとなったが、試験航海としては無事にその目的を終えた。
結局船会社としてはプリマ王国の覇権争いに巻き込まれた形で被害を受けただけで、船の性能、設備、運営に問題は見受けられず、またスタッフの対応も適切なものだったとして一応問題ないものとしてその幕を閉じた。
乗客達も港につく頃には大半が健康を取り戻していたので、一部の救急搬送を待つ症状の重い者を除き船を降りた。
おそらくその後に観光の予定を組んでいた者のほとんどは、その予定をキャンセルすることになるだろう。
そのくらい皆緊張感の中で憔悴しきっていた。
ほとんどの乗客が下船し、人影がまばらになってきた頃、全身を黒で統一した人影が船を降りる。
その人影は黒い帽子にサングラスをしているが、フォルムは小柄な女性のものだ。
黒い女性は少なくなった客の間を抜け、更に人の少ない所へと移動する。
周りに人がいなくなったのを確認すると、黒い帽子とサングラスを取った。
やや色の抜けた髪を風に流すと「ふう」と息をつく。
携帯電話を取り出し、どこかに掛けるとそれを耳に当てた。
数回のコールの後、電話が繋がる。
「
電話の向こうで何やら騒がしい声が聞こえ、女性は眉根を寄せる。
しばらく電話向こうでがなり立てる声を聞いていたが、堪りかねたようにそれに負けない声を上げた。
「だって! アイツがいたのよ! あの人殺しとロボット女! 生きて帰れただけでも奇跡だっつーのよ!」
電話の相手も沈黙する。
「とにかく美術品の奪取は失敗。神器がアイツの手に渡ったのなら一旦は諦めるしかないわね」
電話の相手はもう落ち着いたようで、何やら事務的な口調になったようだ。
「でも収穫はあったわよ」
相手の反応を伺うように思わせぶりに言葉を溜めると、厳かに告げる。
「プリメラの正体が分かったわ」
プラネットガール2 ~海の上の宇宙子~ 九里方 兼人 @crikat-kengine
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます