第2話 あたしだけの
あたしの名前は葉苗菜々。
あたしは昔から片思いをしている。
それは幼馴染みの春川晶にだ。
「菜々!」
「晶、どうかした?」
晶から話しかけられて少し嬉しい…
なんて思うあたしが嫌いだ。
だって晶には……。
「いや、見かけたから」
「晶ー!早く帰ろー!」
元気な声で晶を呼ぶ声。晶には彼女がいる。
晶の彼女は元気で天真爛漫。
まさにそんな言葉が似合う表情豊かな女の子。
「ほら、彼女呼んでるよ?行ってきたら?」
「おぉ、じゃーな」
……なんで背中押しちゃうかなぁ、あたし。
いや、本当は分かってるんだ。
彼の背中を押してしまう理由。
彼に幸せになってほしいからだ。
「あたしの幸せに繋がることはないのに……」
晶に彼女ができるまではあたしが
一番近くにいたのになぁ。
なのに晶に好きな子ができて変に後押しとかして。
「後押しとかしなきゃよかったのかな……」
だって、いつもいつも考えてるんだ。
あたしがもっと積極的にアピールしてたら。
後押しとかしなければ……。
今も晶のそばにはあたしがいたのかな。
そんなタラレバばっかり考えてる。
「後悔したって遅いのに……」
ずっと「晶なら大丈夫!」とか言って。
「応援してるよ!」とか嘘言って。
遠くにいる2人を見ると笑い合って腕を組んでる。
もっと早く告白していたらあの場所に。
あたしがいたりしてたのかな……。
胸が苦しくなり女子トイレの個室に駆け込む。
「なんてね」
そう言って自嘲気味に笑う。
晶の心の中には私なんていない。
でも、せめて。
『俺!菜々が困ってたら絶対助ける!』
『菜々が呼んでくれたらすぐ行くから!』
『菜々は俺の大切な人だから!』
そう言ってくれた晶はあたしだけのものでいて。
「晶……っ!大好きっ……!」
せめて……この涙が止まるまでは。
だからこの涙が止まったら、止まれば。
涙が止まっても晶が好きなのは変わらないけど。
全部あの子にあげるから……。
今だけはあたしだけのものでいて。
片思い 星野羅々 @flowerFocus
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