絶望が、こんなにも簡潔に美しく無駄なく、そしてわかりやすく描かれえるものだとは、思わなかった。
大切な人がいなくなる。
私はまだその経験を知らない。
けれども、主人公が大切な人を失って感じたこと、考えたこと、これがすとんと曇りなく胸に響く。
書かれた言葉のひとつひとつがとてもわかりやすく、理解できる。
死を描きながらも画面が明るく優しいのは、桜のおかげかもしれないし、すこし古式ゆかしい文章表現のおかげかもしれない。
また、絶望も、人間の普遍的なテーマと言えるだろう。
答えはひとつではないが、ここには答えのひとつがある。
答えは現実的でシビアで残酷ではあるが、納得のできるものであった。