片思い

星野羅々

第1話 嘘つき彼女と嘘つき彼氏

私は種崎つぼみ、高校2年。

その日私は彼氏と帰る約束をしていた。

部活が長引いてしまい急いで彼のもとに向かう。


「海くんっ!」


私がそう叫ぶと携帯から私に視線を移す。

彼は私に気づくと微笑んで手を振ってくれた。


「遅かったね、何かあった?」


彼は一ノ宮海。私の彼氏。

もうすぐ付き合って半年が経とうとしている。


「ちょっと部活が長引いて……ごめんね」


申し訳なさそう言うと彼は私の頭に

ゆっくり優しく手を置く。

彼の優しさは付き合ったときと変わらない。


「気にしないで」


あぁ、好きだなぁ。なんて思って

歩き出す彼の隣に並ぷ。

手とか、繋ぎたいけどダメかな……。

すると手をチラチラ見てた事に気づいたのか。


「手、繋ぐ?」


そう言って私に手を差し出してくれた。

私は黙って頷き彼の手を握る。

一見仲のいいカップルに見えるかもしれない私達。


「でねっ!今日レギュラー取れたんだ!」

「へぇすごいじゃん」


後ろから聞こえた声につい足を

止めてしまった私達。

私達の横をすり抜けていったのは先輩カップル。


「……相変わらず仲いいね」

「……うん」


そう言う彼の顔は私に向ける視線と明らかに違う。

……分かってしまう。分かってた。

私は彼を見ていたから。付き合う前から知ってた。

彼は、先輩が好きなんだ。


「……っ」


彼が先輩に向ける目に私は

耐えられずに視線を逸らす。


「行こっか」

「うん」


でも分かってたなんて言ったら優しい彼は

責任や罪悪感で私と別れるのを選択するだろう。

彼が私と付き合った理由は私を好きになれば

辛い気持ちを忘れられると思ったから。

でもずっと気付いてた、彼に求められてないこと。

彼は応えてはくれるけど。


求めるのはいつも私。


付き合っていても私は彼に片思いをしている。

でもまだ彼から離れたくない。彼のそばに居たい。

ごめんね、優しい君に甘えて利用して。

でも君が私を想ってなくてもそばに居たいの。

私は知らないふりを、気づかないふりをするの。

私は片思いだと分かってても今日も変わらず。


「ねぇ、どこか寄って帰ろ」


君の隣で笑うんだ。

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