幕間 ミレニア、反省する


「あああああああああああぁぁああああああぁぁぁぁぁぁ!!」


 一人、誰もいない鴨川の河原で、唸り叫んだ。

 誰もいないからこそ、叫んでいた。

 誰かはいたのだけど、たった今、退場させてしまった。


 やってしまった。やってしまいました。

 せっかくこの世界を訪れてくれた大事なお客様、ノアさんを力いっぱいにぶっ飛ばしてしまった。


 私が抱えている【眠りの呪い】にすら軽く打ち勝ててしまうくらい、私は混乱していた。


 だって、いきなり、いきなり私の…………。


「あああああああああああぁぁああああああぁぁぁぁぁぁ!!」


 とりあえず、人目も憚らず、唸り叫んだ。

 だって憚る人目が、ありませんし。


 まったく、これも〈職業分け帽クラスカウター〉のせいだ。

 ノアさんに使って欲しくて出したのは私なのですけど、まさか自分まで判定されることになるとは思わなかった。

 そういえば、ノアさん、私に帽子を被せる前に、何か呟いていたな。

 ……………………。

 …………もう一度だけ、叫ぼう。


「あああああああああああぁぁああああああぁぁぁぁぁぁ!!

      はいっ!!」

 

 よし、切り替えた。


 さて、今夜、気になったことはいくつかあった。

 その中でも一番は、ノアさん、彼がこの世界に来た経緯だ。

 たしか、『女神に声をかけられて』と言っていた。

 女神、その存在を私は知らない。

 詳しく聞きたかったが、『踏み込んではいけない』と、そう直感が働いた。

 私の見えないところで、何かが動いている。

 もしかすると、私がこの世界から出ることができない、そのことと関連しているのかもしれない。

 だとすると彼は、巻き込まれた被害者だ。

 そしてきっと明日以降も、ここに来ることになる。

 申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


 …………。


「ふぁあぁぁぁぁ」

 欠伸が出た。


 だめだ、考えると眠くなってきました。今度の今度こそ限界です。

 とりあえず、寝るとしましょう。


 世界の皆さん、おはようございます。

 そして、おやすみなさい。


 そして私は黎明の刻に、解釈違いな夢をみるのだった。


  〜 第一夜 日常の終わりと夢の始まり 終 〜

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