瑛人のバレンタイン2024
大田康湖
瑛人のバレンタイン2024
(ここだと思ったのに)
幼なじみの
『バレンタインのチョコレート、瑛人の毎日見る場所に入れといたから、見つけたら連絡してね。昼休み中に見つけたらごほうびあげるよ』
メッセージにはしおりの挟まった本のスタンプが付いていた。
菜々はこのところ推理クイズの本にはまっていて、瑛人にも時々問題を出してくる。しかし、この文面ではヒントにもならない。とにかく瑛人は頭をひねり、菜々が行きそうなところをかたっぱしから探し回っていたのだ。
(菜々は2組だから、俺のクラスに入ってきたら誰か気づくはず。そうなると下駄箱か廊下の掃除用具箱、クラブ室のロッカーか)
そう思って瑛人は下駄箱のある玄関にやってきたのだ。そこに同じクラスの
「おい、それってチョコか」
勇磨のカニ歩きがさらに早くなる。
「まさか、俺の下駄箱から取ったんじゃないよな」
勇磨は激しく頭を振った。
「
九美しおりは瑛人と同じ1組で、菜々の友人だ。絵本好きで、よく駅前の書店に菜々と行っているのを瑛人は知っていた。
(しおり、本のしおり、まさか)
瑛人の中で、菜々の送ったスタンプと、九美しおりが結びついた。そこに勇磨が呼びかける。
「もうチャイムが鳴るよ」
瑛人と勇磨はあわてて教室に駆け戻った。
授業が始まり、瑛人は教科書を出すついでにそっと机の中をまさぐった。明らかに教科書よりかさばったものが入っているのがわかる。おそらく瑛人が下駄箱に行った隙に、しおりが菜々から預かっていたチョコを机に入れたのだろう。
斜め前の席から心配そうにのぞき込むしおりに、瑛人は軽くうなずく。勇磨がそんな二人を気にしているのに瑛人は気づかなかった。
おわり
瑛人のバレンタイン2024 大田康湖 @ootayasuko
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