乗って残そう。~この馬鹿をそろそろ誰か怒ってやりましょう~
くすのきさくら
何しとんじゃー!
俺には三分以内にやらなければならないことがあった。
それは公共交通機関の維持のための行動である。
平日の七時二十二分。
俺を乗せた電車が定刻通りに終着駅へと到着する時刻。
現在の俺は通学途中。この後高校の最寄り駅までのバスへと乗り換えるのだが。乗り換えのバスが電車の着いた駅前から出発するのが七時二十五分。
乗り換え時間はたった三分。駅からバス停までは普通に歩いて二分ほどの距離(人混みがなければ)。
これに乗り遅れると次のバスは一時間後。
一限の開始に間に合わなくなる。
この乗り換えは大切だ。
乗れなければ遅刻確定。
さらに言うと、俺というバスの乗客が乗らないと。例え一区間のお客でもバス会社にお金が入らない。
今は利用者が減って、減便、廃止が相次ぐ公共交通機関。
俺はバス維持のために利用している。
ちなみに乗り換えがギリギリならもう一本前のバスに乗れと言う人がいるだろうが。この七時二十五分がバスの始発である。
すでに減便の流れが押し寄せているな。だからこのバスだけでも維持できるように俺は毎日利用するとここに宣言しよう。
なお、電車の方を早くすることは無理だ。俺の睡眠時間も大切だからな。
ブレーキ音と共に身体が傾き――揺れる。俺を乗せた電車が駅へと到着(七時二十二分)。
ドアが開くと一斉に俺と《《同じ制服》を着た学生がホームへと溢れ。改札の方へと歩き出す。中には走る者も居る(七時二十三分)。
俺は一番最後に下車。前を歩く学生たちを眺め。追いかけつつ(七時二十四分)。改札を抜けてバス停へと向かう。
前方に止まっているバスまで数十メートル。
「――少し早いか」
バスのドアが閉まる(七時二十五分)。
「あー、残念。今日も間に合わんかったかー」
ゆっくり動き出したバスを見つつ。俺は満足げな顔でバス停のベンチへと座る。
公共交通維持のため俺は次のバスまで、自身の内申点を削りつつも。見慣れた校舎を少し先に見つつ今日も待つことにしよう。
了
乗って残そう。~この馬鹿をそろそろ誰か怒ってやりましょう~ くすのきさくら @yu24meteora
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