第5話
いきなり、バッファローが頭をぐいっと下げた。
僕は前につんのめるように大勢を崩し、角から手が離れてバッファローから振り落とされた。
そのまま何もない暗い空間に放り出された。
落ちる、落ちる、落ちる……。
ドンッ ガタンッ
椅子が床に落ちた音がした。
と音がして、ほっぺたに床の感触が合った。
生きてる? 生きてる、かも。
ここどこ? 家じゃない?
あれ、休みの日じゃなかったっけ?
そこはどう見ても教室だった。
中学校の、今の僕のクラス。
一番うしろの窓側の席で、倒れていた。
しかも授業中だった。
さらに言えば怖いことで有名な中西の国語の授業だった。
急に大きな音がして教室の皆は後ろを振り返っている。
右隣の席には、中学生になったゆーちゃんの姿もあった。呆れた顔をしている。
中西先生が僕の寝ぼけた目を見据えて「おい」とドスの効いた声を出す。
「寝てたな」
「……はい」
「あとで職員室に来い。いいな」
それは死刑宣告だった。
僕は倒れた椅子を元に戻して座ると、教室中からクスクスと密かな笑い声や「椅子ごと倒れるとかやばすぎだろ」という声が聞こえた。
その後、しばらく経った授業の終わり間際、中西が後ろを向いたタイミングで僕の机にかさりと四角く折られたノートの切れ端が飛んできた。
中身を開けてみる。
[言っとくけど、何度も起こしたんだからね。私のせいにしないでよね]
僕は隣の席のゆーちゃんを見た。
彼女は前の方を向いたまま、目だけで僕の方を見た。
ああ。
今度バッファローが現れても、全てを破壊するのだけは遠慮しておこう。
あぁ夢オチのバッファローたちよ 園長 @entyo
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