迫りくる恐怖、悪魔の仕業!

羽弦トリス

ある中年の孤独な闘い!

休憩時間には三分以内にやらなければならないことがあった。


オレの名は、原井泰造。

工場のライン作業の監督を生業としている。


ベルトで流れてくる機械の取り付けが主な仕事だ。

期間工では無い。

管理者で、期間工の作業を教えたり、こうやって急な休みの穴埋めをすることはしばしば。


作業中、トイレに行きたくなった。しかし、作業を止める訳では無い。

後、10分すれば休憩時間で交代だ。


ハァハァハァハァ。

なんと言う便意だろうか?

我慢だ!我慢だ!

したいから出すのは子供だ。オレは立派大人で管理者。

醜態を晒す訳にはいかない。


グノウワッ!

こいつぁ〜、大モンだ!

作業に集中しろ!おれ!


スゥハー、スゥハー

そうだ。ここで、びっくりするくらい楽になれ!

よし、後、2分で休憩だ。


キーンコンカーコン


よし!トイレにダッシュだ!

「原井さん!」

と、オレを誰かが呼んだ。

「何だ?」

期間工の谷田だった。

「あの~、僕、早退出来ませんかね」

「どうして?」

「片頭痛が酷くて、吐き気がするんです」

「大丈夫か?分かった。代わりの人間を用意するから、早退しな」

「原井さん、ありがとうございます」


オレは、トイレにダッシュした。


!!


事もあろうか、3つあるトイレのカギが掛かっていた。

あのやり取りで、三分は時間が過ぎていたので、先客がいた。


オレは額から、ダラダラと脂汗をかいた。

括約筋も臨界点を迎えようとしていた。

漏らす事は、期間工に何を言われるか分からない。

糞監督と呼ばれてしまいそうで、怖かった。


誰も、トイレから出て来ない。


ハァハァハァハァ

モーだめだ!


オレは、チューリップ型の小便器に尻を突っ込み、第一波を始末した。

そして、トイレ掃除用具室によちよち歩きで移動して、トイレットペーパーで拭いた。

だが、まだ、したい。


ジャー


誰かが出てきた。

入れ替わりで、ソイツがトイレから去ると大便器に腰を下ろした。


何とか、最悪の事態は免れた。

ウォシュレットで流すと、トイレットペーパーに手を伸ばした。


!!


芯しか無かった。

どうしよ?ウォシュレットで流したから、大丈夫だよな?


「うわっ!小便器で誰かウ◯コしやがった!」

「あっ、きったねぇなぁ」


何者かが、小便器の便を発見したようだ。ふん、所詮は会社のトイレ。誰だか、バレるまい。


「あっ、原井監督のネームプレートじゃん!」

「ホントだ!このウ◯コ、まさか、監督じゃね?」


し、しまった〜!パニックで、ネームプレート落っことしたの気付かなかった!

オレは覚悟した。


ジャー


「あっ、監督は大便器でトイレしてたんですか?」

「当たり前だ!どうした?」

「これ、見て下さい!」

「うわっ、きったね。誰だ?」

「あの~、監督のネームプレートが落ちてますが」

「こりゃ、陰謀だな。オレを陥れる為の手の込んだ嫌がらせだ!」

「監督、オレ等は味方ですから。谷田さんを心配して、早退させてくれる程の方にこんな仕打ちをするなんて」

「……ま、こんな事、気にしないよ」

「さすが監督。落ち着いていらっしゃる」 


あ、危なかった〜。

今日は、オレも尻の具合が悪いから現場を離れよう。

あとは、代わりの人間を探せば良い。


帰宅して、盛大に脱糞したのは言うまでもない。


終劇

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迫りくる恐怖、悪魔の仕業! 羽弦トリス @September-0919

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