しやぼん玉 🫧

上月くるを

しやぼん玉 🫧



春眠をさめてすこしく拍子抜け

春眠の彼方になにか見えてをり


アネモネや睫毛の長き白き犬

黒犬や忘れな草をけちらして


空若し恋のはじめのしやぼん玉

しやぼん玉いびつな円を大空へ


誰もゐぬ団地の庭の風車

老幹の洞でかすかに風車


いもうとの背を押す姉や半仙戯

鞦韆にわが影のせてやりにけり


風船のひも握る手の幼くて

風船や駅の階段くだりゆく


江戸期より潤す堰やつくし摘む

ふくろふの置物の前よもぎ摘む


踏青やこのおほ空をひとり占め

春日野に春も馬酔木も咲き誇る


遠山の空に溶け入りあたたけし

かがやけるまちや野山や春の昼


鶯菜やさしくあらふボールかな

もの置かぬ床のつやつや春の宵




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

しやぼん玉 🫧 上月くるを @kurutan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ