【KAC20241】この時ばかりは性格を恨むしかない
麻木香豆
⌚️
倫太郎には三分以内にやらなければならないことがあった。
倫太郎はギリギリに間に合わせればそれでいい、という性格であって、そんな性格を一番恨むしかなかった。
しかし彼の仕事は期日を1日たりとも遅れたことはない。遅れることは嫌な性格、それはそれで良いのだが。
「あっ!」
荷物が多くて鍵を落としてしまう。
今倫太郎は外にいる。二月の夜は寒い。
鍵を拾いたくても拾うのに困難を極める。今手に持っているものを落としたくない。
「郵送にすればよかった」
と言ってももう遅い。
終わりよければすべてよし、期日に間に合えば、という性格。
倫太郎はふと時計を見る。
「間に合わない!」
なんとかしゃがみ込んで鍵を上手いこと取って……エレベーターの前に行くがそこに
『メンテナンス中』
という紙が。
「なんでこんな時に!」
数日前からわかっていたことだったのだが気にもかけないなかった。
慌てて階段を使う。
息切れ切れに倫太郎は到着する。
ホッとした。この時間は間に合わせなければいけなかった。
と思ったのもさっき車を降りた時だった。
もうあと3分しかない。部屋に着くまでは。
愛する文香の誕生日。
それが過ぎてしまう。
今日祝いたかったのだが急遽出張になってしまった。運が悪い!
なんとか間に合った。ホッと一息ついてインターフォンを鳴らした。
そしてドアが開いた。
4年に一度、閏年2月29日の誕生日の文香の誕生日。
だからこそちゃんと祝いたかったんだ。
持ってきたケーキ、花束、そして
「僕と結婚してください!」
あれから4年後の今日。閏年。2月29日。
見事その時振られたんで……他の男がいたから。時間に余裕のない雑な男は嫌いだってさ。
てなわけで今も独身なんです。
あ、カップラーメン出来上がりましたね。
なーんだっ……て? 先輩が3分の間に何かいい話しろっていうから。
にしても四年に一度しかないこの日、いい思い出作りたい……って先輩?
僕は好きな先輩にキスされた。会社の給湯室で。
終
【KAC20241】この時ばかりは性格を恨むしかない 麻木香豆 @hacchi3dayo
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