スタンプラリーのように実在する施設や土地を巡って参加者が掌編を集め、最終的に一つのホラー作品を完成させようという趣旨で描かれたこの作品。
私は最初にその話を聞いた時「そんなこと、出来るわけがない!」と失礼ながらそう感じてしまいました。ホラーで? 実在する施設を扱う? まさか、殺人事件やら、怪奇現象を許可なくでっち上げるわけにもいかなし、各地を回らせるだけの吸引力を持った魅力的なホラー作品なんてどうやっても書きようがないのでは?
いいえ、出来ました。
謎めいた案内人の不気味な語り口と、実に興味深い史実や伝承を交えてしっかりホラー作品として成立させています。入念な調査、フィールドワークが不可能と思える難題を可能にしたのでしょう。よくぞこんな面白い話を見つけてきたと拍手喝采を送りたいものです。
まだまだ小説には新しい可能性が残されているのだな…と感じさせてくれる力作。旅行や地域に根差した民俗学に興味のある方は是非!